1975年に吉田拓郎、泉谷しげる、小室等と新たなレコード会社を設立した井上陽水が翌年にリリースし、時代のニューミュージックと共鳴することになったポップなアルバム。これまで微に入り細をうがってサウンドを煮詰めてきた星勝に加え、矢野誠をアレンジャーとして起用。透明感のあるストリングスや矢野顕子も参加したコーラスワークが絶妙な"Good, Good-Bye"や、小椋佳との共作曲"坂道"で、新しい井上陽水像を描き出している。これまでの絶唱は影を潜め、胸声とファルセットを生かしたヴォーカルスタイルが、作品全体に通底するメロウな空気感を生み出している。また、高中正義と椎名和夫のファンキーなギターカッティングに導かれながら、淡々と言葉をつづる"青空、ひとりきり"や、たえなるストリングスがヨーロッパ風味を奏でる"もう..."は、その後の陽水サウンドへと連なる方向性を示したといえる。
- 2017年
- 2015年
- 高橋真梨子