

【選曲解説 by 長谷川プリティ敬祐】 復活までの間、助けになってくれた楽曲ということでプレイリストを組ませてもらったのですが、入院・リハビリ・鍛錬・手術・苦悩・激情の日々の中で音楽というものは常に自分と共にありました。 入院中にセイヤがCDとステレオを貸してくれて毎日聞いていた曲、当時一緒に暮らしてくれた母親に嗚咽が聞こえないよう大音量で流していた曲、走っている時に常に脳内でリピートしていた曲、弾きたくなっても右腕が思うように動かなかった曲、祝福してくれた友人が教えてくれた知らなかったジャンルの曲。 あの日々を思い返しながら選曲したのですが、思い出に残っている曲の約7割が日本のバンドの楽曲でした。自分を助けてくれてバニラズに引き戻してくれた洋楽はいくつもあるのですが、今回はどうせなら邦楽限定で正直にプレイリストを組んでみようと思います。格好をつけることはせず、あの日々を曝け出すつもりです。 「僕はビートルズ」という漫画の中で『生まれくる楽曲には当人が生まれ育った風土が分かち難く存在する』という様な言葉がありましたが、どうしようもなく僕は日本人で、コードワークにも言葉にもメロディにも胸を打たれて復活まで戦うことが出来ました。当たり前が消失した今の時世を戦うみんなの支えにもなると確信しているので、お付き合い頂ければ幸いです。 折角の機会なので順番に少しずつ触れていこうと思うのですが、まず外せないのは僕らのパラノーマルワンダーワールドです。歌入れ直後に事故に遭い記憶が飛んだため、歌詞は歌と共に病院で聴き、涙しました。こんな素晴らしい曲を作る人間と共にいて、正しく生きないわけにはいかないと思えた人生讃歌です。自分のバンドだから、ではなくて本当に支えになってくれたので最初に入れました。 そして入院中にテレビから毎週聞こえていたKANA-BOONの"ハグルマ"。懸命に生きる仲間の存在を空っぽの頭に思い出させてくれました。 そうして退院出来てからずっと聴いていたのが大好きなフラワーカンパニーズの"孤高の英雄"。ラストの『がんばれケイスケ』という叫びは十代の時からずっと自分の背中を押してくれます。 エレファントカシマシの"Easy Go"は自分の涙を止めてくれて、前を向く強いパワーを与えてくれました。 バンドマンとして生きるのが俺の人生だ!と生き方を思い出させてくれたのはドレスコーズの"バンド・デシネ"です。僕の家のキッチンに飾ってあるバンド・デシネの巨匠エンキ・ビラルの絵画と、煙草と共に。 そして体を鍛える為に毎日ジムに通っていたのですが、「きついなんて気持ちよりも体が作られてる実感の方が上でした。」って言うのが格好良いのでしょうが、本当は逃げたくなる自分を律するのに精一杯でした。俺は強い人間だ、と自分を騙してくれたのがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの"バードメン"です。 ロックンロールバンドの本領はthe pillowsの"About A Rock'n'Roll Band"が見せてくれました。外に出ることは無かったのですが、ピロウズの「王様になれ」と30周年記念展には行っていたんです、実は。 退院してからも毎日20錠近く薬を飲んでいたのですが、その時頭の中では大貫妙子さんの"くすりをたくさん"が流れて笑っていました。自分に少しゆとりが出てきたのがわかります。 忘れらんねえよの"バンドやろうぜ"は『過去に俺はこのバンドでもベースを弾けていたんだ』という自信もくれて、弱者を愛する視点と共に叫び続ける柴田さんを近くに感じることが出来ました。 俺はこうあらねばならないと、このまま行くべきだと、希望をくれたのはヤプーズの"コンドルが飛んで来る"でした。怖くなっても、人間に必要なのは狂気だと牧も言ってくれています。 尊敬するベーシスト・沖井礼二さんの楽器からはSCOTT GOES FORの"Arthur's Theme(Best That Can Do)を。憧憬と音楽愛、強い力で出来ています。 悩み、不安、恐怖で眠れない日々に『それでも』という思いをくれたのがKIRINJIの"Drifter"でした。『良い音楽を作るには健康な心が不可欠だ』と考えたのを覚えています。 体力もついてきて次は喉を鍛え直すために毎日カラオケに通っていたのですが、歌っていたのはBUMP OF CHICKENの"ray"でした。BUMPはjupiterが出た頃から大好きで、ビデオポキールも持っています。再生機器はありませんが。 プレイリストを作るにあたって絶対に入れたかったのが、永遠の兄貴・THE BAWDIESの"I'M IN LOVE WITH YOU"です。四人でお見舞いにも来てくださって沢山の笑いと愛をくださって、僕のせいで出れなかったライブだって変わりに引き受けてくださいました。輝かしい3度目の武道館を見に行く事は叶わなかったのですが、マネージャーがDVDを持ってきてくれて、それを見ながら当日の空気感を想像していました。"I'M IN LOVE WITH YOU"は昔から僕が大好きな曲で、これを武道館で演奏する姿はこみ上げるものがありました。全ての素晴らしさが詰まった一曲だと思っています。 次は聴いた人全てを笑顔にさせるバンド、吾妻光良 & The Swinging Boppersの"最後まで楽しもう"で笑ってほしいです。最後まで楽しもう、俺の最後はここじゃない、リハビリだって楽しんで向かうのが男らしい。そう思い続けました。最後まで楽しもう、なんていい言葉なんだろう。 こうした音楽の力を得て、僕は復活することが出来ました。だけど復活してからも、人生は続くんです。その先に生み出された一曲を最後に聴いてほしいです。go!go!vanllasの"アメイジングレース"。僕がこの曲を弾けたのも、ここまでに紹介した楽曲達の力のおかげです。音楽はずっと繋がってる。それがロックンロールのロールだ。 かなり長くなってしまいましたが、これがあの期間に僕を支えてくれた日本のバンドの楽曲の一部です。復活出来た今の気持ちで選曲するのではなく、当時を思い出しながら選ばせてもらいました。通り一遍の『危機的状況』ではなく、本当の意味で窮地に陥った人間の助けにもなってくれるのが音楽の素晴らしさの一側面ではないでしょうか。 僕らの楽曲も、同じように誰かの支えになれていることを祈っています。