1990年代を駆け抜けた数多のバンドの中でも、とりわけ強烈なインパクトを残したのがJUDY AND MARYだ。ボーカリストのYUKIと確かな実力を持つ演奏陣が編み出したロックは、他のどのバンドにもない個性があった。特にハイトーンでよく通る声を持つYUKIの存在感はナチュラルでありながらキュートで、その伸びやかな歌声と鮮やかなファッションセンスは性別を問わずファンの心をわしづかみにした。デビュー初期は彼女の存在を際立たせたパンキッシュなサウンドが“ロリータパンク”と呼ばれ、「Hello! Orange Sunshine」のようなアップテンポのナンバーが人気を博す。そしてミディアムな曲調に切なさを忍ばせた「小さな頃から」など、バンドは成長を経ながらファン層を拡大していく。「そばかす」や「くじら12号」が大ヒットした1990年代半ばがバンドの絶頂期で、たくさんの輝かしい瞬間を刻み付けた。この4人の音楽との出会いによって、ジェンダーを問わずロックを鳴らすことは可能なのだという勇気をもらったリスナーは多いに違いない。実質10年ほどの活動でビッグセールスをいくつも記録し、同時代における印象の強さは絶大だったが、彼らに似たバンドがその後現れなかったことは、このバンドがいかにオリジナルであったかという事実を痛感させる。ポップサウンドとともに強烈なエネルギーを放った4人は、間違いなく1990年代屈指のバンドだった。