「長らく黙ってお待ちいただいた方、そうでない方、激烈に感謝します」。初作品『音楽と密談』から約4年ぶりの発表となったこのセカンドミニアルバムについて、浦上想起はApple Musicに語る。彼の存在感は音楽シーンで確実に高まり続けていた。2021年の「爆ぜる色彩」をはじめ、新曲をコンスタントにリリース。そのすべての楽曲で膨大な情報量を凝縮したストーリーを描いた。テレビドラマのテーマソングの作曲や、米津玄師の作品への参加も話題になった。 浦上想起の音楽は、古今東西のあらゆるサウンドを緻密にコラージュすることで形作られる。本作でもアジアやアフリカ、中南米など、さまざまな場所を渡り歩く旅人のような視点で、自分だけの世界地図を描く。それは一見無秩序に見えながらも、とても繊細にデザインされている。「楽曲を複雑にしようと思えばいくらでも手を加えることはできる。どこで歯止めをかければ一番美しいかを探る、いわば自分との対話/戦いこそがポップス音楽の創作における面白さの一つ。そのバランス感覚を一つの形で表現できたのではないか、と自負しているところです」。浦上想起が直感的なセンスと的確な判断力をもって紡いだ本作。ここからは彼に収録曲を自ら解説してもらおう。 人のダンス 静かに燃える民族舞踊のようなイントロを作りたくて制作した楽曲。陰惨な世に対する憤怒やしんどさを無理にでも楽しさに変換することは、倫理的にまだ受け入れられにくい行為なんだろうか、みたいなことをぼんやりと(でも結構真剣に)考えながら詞を書いた。愚かな人類たちのダンス。 光り輝く庭 (feat. 宗藤竜太) ゲストボーカリストを"フィーチャリング"なる形で初めて迎えた曲。歌唱表現の奥底にある機微とか、優しく軽やかに寄り添う情感を受け取ってもらえると大変ありがたいです。アウトロの(ポップスとしては)異様に長いソロは松丸契くんにお願いした。うねる伴奏の中で周囲の空気まで引きずり込む、終盤の熱いフレーズを聴いてもらいたい。 爆ぜる色彩 (2024 Updated Mix) とある企業のCM仕事の中でスケッチしたボツアイデアから断片が生まれ、結構まともな形になった。今回のニューミックスではテンポの変更、楽器のリテイクの他、新たに指スナップの音を追加。この曲をきっかけに、昔から敬愛していた作曲家の方に取り上げてもらったり、さらには実際にお会いしたりできたため、結果的にものすごいラッキーだった。 角を探す人 (Extended Version) 今回のアルバムで唯一の、バンド形式での作品。結構気恥ずかしいくらいポップな方角を向いた楽曲だが、シングルで発表した当初から、いろんな方から感想をもらったりBGMに使用してもらえたり、とても良い感じの心地になった。ポップス音楽というジャンルは決して軟弱ではないと信じている。 蜃気楼の人 中学の頃に作った稚拙なメロディに、歌詞をはめ込み、和声を食らいつけ、形にした。実家から持ってきたメトロノームの音は録音に使用するだけの予定でしたが、せっかくなので採用。限られた時間の中で、シンプルな楽器の構成からどれくらいの色調を生み出せるか、即物的な試行を繰り返してみたっていう感じの作品。 甘美な逃亡 (2024 Updated Mix) 前回のリリースド・バージョンと比べて、サクソフォンの少し破壊的なエフェクトを強め、歌の大部分も大きく差し替え。いい感じになってれば幸いです。 夢の港の夢 珍しくかなり気に入っているメロディと構成で、サビ途中のクラシカルな転調部にも、自らの好みをしたたかに打ち付けたって感じです。何かを喪失した人たちの、寂しさをはらんだポップな明るさっていうか、とにかく夢の中に出てきたにぎやかな港をイメージしつつ悩みながら書いた詞、見てもらえるとありがたい。
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