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デビュー以来、全幅の信頼を置いていたアレンジャーの星勝が手掛けた楽曲に加え、名ギタリスト、高中正義の編曲による楽曲を半分配置した作品。このアイデアは見事に成功し、井上陽水の新たな表情を生み出した。同時に、先行シングル"なぜか上海"を例に出すまでもなく、エキゾチシズムがポップの極上のフレーバーになり得ることを実証した。また、高中のギターもフュージョンスタイルではなく、前年に大ヒットを記録したシックのナイル・ロジャースにも通じる乾いたカッティングでサポート。"スニーカーダンサー"の突き抜けるような爽快感は、このギタートーンがあってこそ。小室等の作曲によるレゲエ風味の"事件"、そしてサンタナ風の泣きのギターソロが心の琴線を震わせる"なぜか上海"まで、バラエティーに富んだ内容が楽しめる。生まれたばかりの長男に向けて書かれた"海へ来なさい"は、その真摯な言葉が胸を締め付ける。