1997年にシングル「カウントダウン」でメジャーデビューを果たした沖縄出身のシンガーソングライター、Cocco。彼女の歌は、当時全世界を席巻していたオルナタティブロックの文脈で語られることが少なくなかった。ヒット作である1998年のセカンドアルバム『クムイウタ』をはじめ、彼女の多くの作品でプロデュースを務めてきた根岸孝旨が壮麗なストリングスを交えながら生み出してきたエッジーなバンドサウンドは、時代のムードも少なからず反映されている。しかしそのサウンドの激しさ、重厚さを呼び込んでいるのは、時代性ではなく、Coccoの内面で渦巻く魂の叫びであることは、2017年にデビュー20周年を経てもなお、熱烈な支持を集めながら続く彼女の活動と濃密な作品が物語っている。愛の激しさや優しさ、包み込むような母性や純粋無垢な感性、故郷の沖縄への強い思いなど、湧き上がる感情を音楽とともに表現する彼女だが、2001年から5年間にわたる活動休止も経験している。しかし、2004年にくるりの岸田繁らと結成した5人組バンド、SINGER SONGERを経て、2006年にソロ活動を再開。以後は音楽と並行して絵本の出版や環境保護活動、小説、エッセイの執筆や写真、映画や舞台への出演など、さまざまな場でクリエイティビティを発揮しながら、2020年のアルバム『クチナシ』の花言葉が象徴するような、喜びをも運ぶ大きな表現世界を描き出している。