最新リリース

- 2024年2月28日
- 10曲
必聴アルバム
- 志村正彦がかねてから関心を持っていた、若さや時間の経過というテーマ性を持つメジャーでの3作目。先行シングルとしてリリースされ、夏の終わりの花火の情景と共に揺れる心を描いた"若者のすべて"や、過ぎ去っていく青春時代への思いが込められた"記念写真"などに、このバンド特有の日本的な叙情性がよりヴィヴィッドな形で表現されている。風変わりでサイケな匂いが漂う"Surfer King"や"パッション・フルーツ"などバラエティ豊かな表現力から、前作から2年2か月というインターバルの間にサウンド面での発展があったのは明らか。セールス的に大きな成果を残したわけではないが、彼らを語る上では絶対に欠かせない、2008年発表の重要作。
- 2021年
- 2021年
- 2019年
- 2018年
- 2018年
- 2016年
アーティストプレイリスト
- 感情を浄化させるような独創的なサウンドは、いまだに進化中。
- 2023年
ベストアルバム、その他
フジファブリックについて
フジファブリックは、音楽そのものの美しさと、独特のひねくれた感じが混在する、実にユニークなバンドだ。これは最初にリードボーカルを務めた志村正彦の時代から見られた傾向だったが、2009年に彼が早世してしまった後、その座を引き継ぐ形でギターの山内総一郎が歌うようになってからも、そうしたバンドの個性は貫かれている。志村がバンドを先導した初期は、季節や風景を感じさせる叙情性が一つの持ち味だった。メジャーデビューシングルの「桜の季節」(2004年)やスローバラードの「茜色の夕日」(2005年)しかり、このころのフジファブリックの音楽は空の情景や空気の匂いなど、歌詞の主人公がいる場や状況を丁寧に、時に文学的に描きながら、その心の動きを歌っている。この背景には、志村が山梨県の富士吉田市という自然豊かな場所で生まれ育ったのが関係していると思われる。志村が上京後に出会ったメンバーたちは、そのリリカルな世界の味わいをより深めるためにプログレやサイケデリックなどさまざまな音楽の要素を加え、日本語のロックを高らかに鳴らした。志村時代の作品で特に広く愛されているのが「若者のすべて」(2007年)である。青春の時期特有の揺れ動く思いを切り取った名曲で、この楽曲が収録された2008年発表の3作目のアルバム『TEENAGER』は、きらめきをたたえながらも満たされぬ感情を抱える若き日に思いを寄せた作品になっている。「若者のすべて」は後に柴咲コウ、藤井フミヤ、Bank Bandといった多くのアーティストたちにカバーされることとなった。山内がボーカルを取るようになったのは2011年のアルバム『STAR』以降で、ここからフジファブリックは、3人編成として新たな章に進むことになる。ただ、冒頭に述べたような楽曲のスタイルはメンバーたちによって追求され、より深められることになった。特に山内のボーカルは大げさに張り上げたり飾ったりすることもなく、基本的には素直な歌い方で曲の世界を表現している。その歌声による温かみや、切なさといった情緒の味わいは、バンドの新たな魅力となった。中でも2019年に発表した10作目のアルバム『F』は「破顔」や「手紙」といった優れた楽曲を収めており、音楽ファンからの評価が高い。フジファブリックはどんな状況や段階を迎えても、そのたびに一番最初にバンドを立ち上げた志村の存在に立ち返りながら活動していくだろう。彼にはそれだけの才能があったわけだが、言い換えればメンバーたちは、その大きな才能と意志を受け継げるだけの力量の持ち主だった、ということである。そしてこうした形で続いていくことは、このバンドに関わる人々と、このバンドの音楽を愛するすべての人々にとってポジティブで、素晴らしく前向きなことであるに違いない。
- 出身地
- Japan
- 結成
- 2000年
- ジャンル
- ロック