フジファブリック
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フジファブリック

フジファブリックについて

フジファブリックは、音楽そのものの美しさと、独特のひねくれた感じが混在する、実にユニークなバンドだ。これは最初にリードボーカルを務めた志村正彦の時代から見られた傾向だったが、2009年に彼が早世してしまった後、その座を引き継ぐ形でギターの山内総一郎が歌うようになってからも、そうしたバンドの個性は貫かれている。

志村がバンドを先導した初期は、季節や風景を感じさせる叙情性が一つの持ち味だった。メジャーデビューシングルの「桜の季節」(2004年)やスローバラードの「茜色の夕日」(2005年)しかり、このころのフジファブリックの音楽は空の情景や空気の匂いなど、歌詞の主人公がいる場や状況を丁寧に、時に文学的に描きながら、その心の動きを歌っている。この背景には、志村が山梨県の富士吉田市という自然豊かな場所で生まれ育ったのが関係していると思われる。志村が上京後に出会ったメンバーたちは、そのリリカルな世界の味わいをより深めるためにプログレやサイケデリックなどさまざまな音楽の要素を加え、日本語のロックを高らかに鳴らした。

志村時代の作品で特に広く愛されているのが「若者のすべて」(2007年)である。青春の時期特有の揺れ動く思いを切り取った名曲で、この楽曲が収録された2008年発表の3作目のアルバム『TEENAGER』は、きらめきをたたえながらも満たされぬ感情を抱える若き日に思いを寄せた作品になっている。「若者のすべて」は後に柴咲コウ、藤井フミヤ、Bank Bandといった多くのアーティストたちにカバーされることとなった。

山内がボーカルを取るようになったのは2011年のアルバム『STAR』以降で、ここからフジファブリックは、3人編成として新たな章に進むことになる。ただ、冒頭に述べたような楽曲のスタイルはメンバーたちによって追求され、より深められることになった。特に山内のボーカルは大げさに張り上げたり飾ったりすることもなく、基本的には素直な歌い方で曲の世界を表現している。その歌声による温かみや、切なさといった情緒の味わいは、バンドの新たな魅力となった。中でも2019年に発表した10作目のアルバム『F』は「破顔」や「手紙」といった優れた楽曲を収めており、音楽ファンからの評価が高い。

フジファブリックはどんな状況や段階を迎えても、そのたびに一番最初にバンドを立ち上げた志村の存在に立ち返りながら活動していくだろう。彼にはそれだけの才能があったわけだが、言い換えればメンバーたちは、その大きな才能と意志を受け継げるだけの力量の持ち主だった、ということである。そしてこうした形で続いていくことは、このバンドに関わる人々と、このバンドの音楽を愛するすべての人々にとってポジティブで、素晴らしく前向きなことであるに違いない。

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