いつか、その日が来る日まで… (50th Anniversary Remastered)

いつか、その日が来る日まで… (50th Anniversary Remastered)

“本物の大人のロックンロール&ロマンス”—そんなキャッチコピーがつけられた『いつか、その日が来る日まで…』。2019年に発表したこのアルバムについて、矢沢永吉はApple Musicにこう語る。「赤坂の僕のプライベートスタジオ(ODEN STUDIO)で作ったの。でも『1日の仕事をここまで進めなきゃいけない』というのは全部やめてね。(作業に)パッと入って、アイデアが浮かばなかったら、もうその日は『よし、なし。今日はやめ!』ってね」。フレッシュな感覚を大事にしながら作られた本作は、自身のスタジオでベーシックの制作を進め、その後にミュージシャンたちとのレコーディングを敢行。特に重要なパートは縁の深いロサンゼルスに飛んで、海外の精鋭たちとの録音作業となった。「(ベーシック部分のサウンドが)できて、『よし、本物のドラマーとベースとギターを差し替えでいこう』と言って、LAに行ったんです。生の、本物のドラム&ベースで『ワン、ツー!』。だから、めっちゃいいよね」 こうして録音にはマイケル・ランドウ(ギター)、ジョージ・マクファーレンやGuy Allison(いずれもキーボード)など、矢沢ファンになじみ深い面々が参加。現地にはスタッフを大勢連れて行くようなことはせず、矢沢自身がセッティングし、プレイヤーたちと直接コミュニケーションしながら制作を進めた。これはソロ初期からの一貫したやり方で、彼はそうした中で多くのミュージシャンやクリエイターと出会い、その関係をつなぎながら活動してきたのだ。例えばミックスエンジニアを務めるChris Lord-Alge(クリス・ロード・アルジ)はアメリカのロックサウンドを代表する名匠で、矢沢作品では2020年の『STANDARD ~THE BALLAD BEST~』も担当している。「クリス・ロード・アルジでも、誰でもそうです。素晴らしい人との出会いがあって、別れがあって、また出会いがあって…。全部、財産だね」 アルバムには「愛しているなら」や「海にかかる橋」など、メロディの美しさが際立つ曲が並ぶ。もちろん全曲が矢沢自身の作曲だが、優れたメロディを生み出す秘訣(ひけつ)のようなものは特にないという。正確に言えば、本人も把握できていないようだ。「分からないね。あれは出そう出そうと思って出るものじゃないんですよ。出る時はポロポロ出るし、でも作ろう作ろうと思ったら全然出てこない。出る時にはボンボン出ますよ。僕、自分のこと言ってましたもん、『俺は天才だから』って」。そうしてなんとか手中にしてきた最上のメロディたちが名曲となり、作品として形に残るのだ。 一方、歌詞の面で注目すべき点は、全10曲中の5曲をいしわたり淳司が、2曲をなかにし礼が書いていること。プロの作詞家である2人とも、矢沢作品には初の参加である。いしわたりによる「魅せてくれ」はロックンローラーとしてのプライドを投影しているかのようだし、なかにしが書いたタイトル曲「いつか、その日が来る日まで…」は戦い続けてきた男の姿とその覚悟が浮かび上がるバラードだ。このような新しいコラボレーションも矢沢がずっと続けてきたこと。新たな才能との出会いを重ねながら彼は変化や進化を遂げ、そのロックサウンドを磨き上げてきた。 オリジナルアルバムとしては通算34作目の『いつか、その日が来る日まで…』。本作をリリースした直後に矢沢は70歳を迎えた。そして彼は、キャロルでデビューした1972年からこのインタビューを受けた2022年までに、実に50年という時を数えるまでに至っている。「こうやって俺はまだ現役で、ライブやってて…。『これが俺の音楽人生なのかな』と思う、今日この頃ですね」

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