「国内外いろんな場所でライブをして、日本武道館にも立って、みんなから大きな愛をいただいたので、その愛を目いっぱい返したい。だから改めてポップなものをお届けしようと思いました」。水曜日のカンパネラの詩羽(Vo)はサードEP『POP DELIVERY』についてApple Musicに語る。詩羽の考えるポップとは「万人に受けるものというより、自分がときめくもの」だと言う。「私は私の好きなものを大事にするから、みんなもみんなの好きなものを大事にしていいんだよということをファンの方に伝えています。みんなが自分のことを大事にできるきっかけになりたい」 トラックメイカーのケンモチヒデフミは、メンバー3人のバランスがこのユニットを特別なものにしていると考えている。「制作時はいつも3人が自由に好きなアイデアを出し合います。最近こんなキャラクターが好きだとか、『四天王って知ってんの』というワードを使って1曲作りたいとか。それは僕にとって大喜利のお題をもらっている感じなんです」。ソングライティングを担うのはケンモチだが、彼は1人で作っている感覚はないのだという。そんなケンモチの姿勢に、詩羽は全幅の信頼を寄せる。「ケンモチさんが作った曲にみんなでいろいろな要素を加えて味付けをして、大きな輪になっていく。歌い方の指示も全然なくて、私が受け取った感覚で歌うのが正しいとしてくれる。ケンモチさんにそうした流れを受け入れてくれる態勢があるから、私たちは成り立ってるんだと思います」。その言葉を受けて、ケンモチも続ける。「みんなには自分から、偶発的なものをどんどん付加してほしい。そこで生まれる解釈のずれによって、水曜日のカンパネラの表現が面白くなっている気がします」。「この環境があるからこそ、思いっきり自分の好きなことができる」と口をそろえる2人に、ここからはいくつかの楽曲を解説してもらおう。 赤猫 ケンモチ:原作マンガがあり、そのアニメ化にあたって作った曲です。僕らのオリジナル曲は、ある人物のアナザーストーリーを書くような作りが多いけど、原作があるものに対しては、原作のファンや、アニメを見る人がどんな気持ちになったらもっと作品をより良く見たり聴いたりできるかなということにフォーカスして作るようにしています。 詩羽:私の中で猫はかわいいもの、愛おしいものという印象があるので、どこか朗らかな空気になるような歌い方を意識しました。 キャロライナ ケンモチ:赤いものの世界があるとして、そのトップに君臨するのがイチゴという存在。甘くてかわいらしくて、みんなの人気者のイチゴになりたいと願う少女がいるんですけど、途中でダークサイドに落ちてしまう。そして甘さとは対極に位置する唐辛子のキャロライナリーパーになってしまうというストーリーです。 たまものまえ ケンモチ:僕はインストを作るところからキャリアをスタートしたので、ボーカルのメロディや歌詞を考えるところに少し弱点があるかなと思っていて、どうにかしてみんなとは違うベクトルで勝負したいと考えていました。そこでJ-Popであまり使われていないビート感や低音を持ち込んだらどうなるかというアプローチをしてみて、それが水曜日のカンパネラ独特の音楽になっていった。この曲のトラックにもその特色が出ていると思います。 詩羽:私は声色を変えるのが結構得意なので、歌詞の感じによって「ここはすごい男っぽい声でやろう」とか「オラ! みたいなテンションでいこう」とか考えています。この曲はすごくかわいいポップな声を出すことを意識しました。 マーメイド 詩羽:水曜日のカンパネラのライブは、私の歌を聴くというより、お客さんと一緒にコミュニケーションを取りながら、みんなで一緒にライブを作っていくのが自分たちらしいスタイルだと思っています。その意味でこの曲は、みんながよくフェスで首にかけているタオルをサビで一緒に振り回したり、間奏の部分で一緒に声を出したりするコミュニケーションがあるので、一体感を出すのにぴったりで、すごく楽しめると思います。 幽霊と作家 ケンモチ:ドラマの主題歌として書いた曲です。「目指せ来世はビヨンセの子」という歌詞は原作の小説にそういうセリフがあって、さらっと読み流してしまうような一文なんですけど、すごく面白いなと思って。「来世はビヨンセにでもなりてえわ」みたいなことってたぶん誰でも思ってるじゃないですか。そういう面白い言葉の使われ方を歌詞に取り込みました。
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