「誰かがいると思って扉を開けたら、誰もいない切なさ。AIが浸透していない時代には感じなかったそんな感情をパッケージングできたらと思いました」。tofubeatsはEP『NOBODY』について、Apple Musicに語る。2020年のEP『TBEP』に次ぐフロアライクな作品として、ハウスミュージックをコンセプトにした本作。制作するきっかけの一つとなったのが、ある生成AIで作られた楽曲との出会いだったという。「その楽曲がすごくいいなと思って調べたら、作ったのが生成AIだということが分かって、それが結構ショックだったんです。自分は割とテクノロジー肯定派だと思っていたから、ショックを受けてる自分にもショックだった。ただ、誰が作ったんだろうと思ったら誰でもなかったというのはめっちゃ新しい感覚だなと思って。その感じの一端を味わってもらうために、今回は全曲のボーカルをAI歌声合成ソフトで作ることにしました」。人間が歌うかAIが歌うか、その違いは作り手に大きな心理的影響をもたらすとtofubeatsは言う。「人が歌うとなれば、やはりその人だからこその必然性を考える。対してAIは何を歌わせても何も思わないから、心理的にはやりやすいところもある。そういう違いが音楽を作る人のマインドにどれほど作用するのかに僕は興味があるんです」 tofubeatsはAI歌声合成ソフトによるボーカルに、いくつかの重要なメッセージを託した。その一つが「EVERYONE CAN BE A DJ」で何度も繰り返す「だれでもDJにはなれる」というフレーズだ。「自分もテクノロジーの恩恵にあずかって音楽を始めた身なので、これはずっと思っていることです。DJはただ曲をつなぐだけであれば、機材の使い方さえ教われば誰でもすぐにできる。自分で曲をつないで楽しむことを続けていくと、本来なら楽器とかをやらないとたどり着けない音楽の神髄のようなものに少し触れることができるんです。それはすごく面白いことだから、みんなマジでやるべきだという自分の思想が、曲として突然ポンと出てきました」。また彼は、今作の特徴として「どの曲もポップス未満というか、ポップス以下くらいの仕上がりになっている」と解説する。「ポップスっぽい形を取っている『I CAN FEEL IT』と『NOBODY』ですらコーラス、フックという一塊を数回繰り返してるだけ。歌としてメッセージ性はあるけど全部の意味はガイドしない。そこには、クラブミュージックのムードをもっと広く伝えられたらいいなという思いがあります」。急速に変化する時代の中で、ダンスミュージックの潮流を見つめ、音楽を奏でることの意味を問い続けるtofubeats。彼の哲学が、このEPに凝縮されている。
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