On DSCH

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Igor Levitの斬新で壮大なアルバムの前半は、ショスタコーヴィチの『24の前奏曲とフーガ』だ。J.S.バッハへのオマージュであるこの作品は、厳密な音楽形式における表現の可能性を追求する。旧ソ連に生まれドイツを拠点とするIgor Levitは、この巨大な曲集を案内するにはうってつけだろう。「フーガ第9番」ではロシア人の作曲による魅力的な対位法を際立て、「前奏曲第6番」ではソ連の検閲に対する苦悩や怒りを意識する。そして「前奏曲第20番」で顕著なように、暗く、優しい感情のひだといった音楽のもつ詩的な美しさを明らかにし、繊細なタッチで表現している。続く後半では、知る人ぞ知る20世紀スコットランドの作曲家Ronald Stevensonによる壮大な野心作を取り上げる。この作品は、ショスタコーヴィチの頭文字DSCHを(D、E♭、C、B)という音名に置き換え、300もの細かなバリエーションとして組み込み、ショスタコーヴィチをたたえるというもの。想像力が万華鏡のように広大に広がり、多彩な音楽性をもつこの作品を、Levitが魅力的に演奏している。

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