

「自分の人生をリアルにかたどったアルバムになりました」。SIRUPはサードアルバム『OWARI DIARY』についてApple Musicに語る。EP『BLUE BLUR』(2023年)で描いた“ポジティブな絶望”から⼀歩踏み込み、“終わりの始まり”をテーマにした本作。「今の世界はいろんな過渡期が重なり混沌(こんとん)としていて、残念ながら自分でコントロールできることが少なくなっている。その中で、自分をどう奮い立たせて生きていくかが、すごく大切になっています」と、SIRUPは現実を見据える。常々日記的な感覚で曲作りをしているSIRUPは、ここ2年ほどで自身の楽曲を通して自分の価値観が変わってきたことを実感しているという。そして物事を自分軸で考える際には、内側から湧き上がる衝動や、何げない体験こそが大切だと感じるようになった。「例えば『今夜』という曲で歌ってるのは『今まで行こうと思わへんかった店に今日は入ってみようかな』という、考えるより先に動くような感覚。それはほんの小さな日常の変化かもしれないけど、人生が停滞している時は、そういう瞬間から何かが動き出す気がする。だからこそ、その感覚をちゃんと言葉にしてみようと思いました」 音楽プロデューサーTaka Perryとの出会いによって、楽曲制作のスタンスにも大きな変化があった。「Taka Perryとのセッションでは、1日で曲の6割くらいができちゃう。おかげで、その瞬間のリアルでフレッシュな感情やヴァイブスを、しっかり曲に落とし込めた」と、SIRUPは振り返る。アーティストとして、そして日常を生きる一人の人間として、日々新しい自分を感じている。そんな彼がたどり着いたのは、「今という時間こそが最も真実を帯びていて、一番大切である」という実感だった。「終わりをポジティブに捉えることで、始まりをみんなに見せたい」と語る彼に、ここからはいくつかの楽曲を解説してもらおう。 GAME OVER 自分のクリエイティビティを大きく刺激した曲。ソウルやネオソウルのフィールを、もう一度、今の自分のフィルターを通して表現できた。セッションした日からずっと脳内に映像が流れていて、ミュージックビデオの絵コンテも全部自分で描きました。そしてこの曲に近い感覚を持ち、よりダンサブルな要素を強めたのが、2曲目の「LOCATION」です。 CHEESE CAKE feat. Zion.T 韓国のアーティスト、Zion.T君から何か一緒に作らないかというDMをもらって、互いに日本と韓国を行き来してセッションするところから生まれた楽曲。いろんな言語を渡り歩くのは楽しいし、複数の言語が重なることで表現の幅がめちゃくちゃ広がる。言語によってリズムもさまざまで、その言語だから許されるリズムと許されないリズムがある。それは制約と見せかけて、実は表現の可能性を広げてくれるものであることを、この何年かですごく実感しています。 OUR HEAVEN feat. Daichi Yamamoto 最初は全部ポエトリーな感じで攻めたくて、“めっちゃ歌う俺”は入れるつもりがなかった。でもDaichi Yamamoto君のラップを聴いたら高まってきて、それに対するアプローチを考えたら結局歌に行き着きました。このリリックの通り、2、3年前までは週5くらいのペースで、三宿で朝まで飲んで、そのままセッションに行ったりしてました。そんな生活をしても喉がつぶれることもなく、どうやら自分はタフだっていうことに気付いた(笑)。最近はワークアウトもしてるから、過去イチ体力あると思う。体力があり余って、夜10時に全力疾走とかしてます。ちょっとヤバいですね(笑)。 RENDEZVOUS feat. hard life 2年ほど前にイギリスのバンド、ハード・ライフからもDMをもらって、すごくテンションが上がりました。この曲はデモの時点からめっちゃ大好きで、さらにボーカルのマレーが日本に来た時に、お互いの状況を話しながらセッションして作った思い出の曲。ハード・ライフのサウンドにY2K的な感覚があって、2000年代初頭に聴いていたMr.Childrenさん、平井 堅さん、RIP SLYMEさんなど、自分の中の邦楽の引き出しが自然と開いていった感じがします。「嘘も本当も君がいないならば意味はない」という歌詞は、宇多田ヒカルさんの楽曲(「In My Room」)にあるフレーズ「ウソもホントウも君がいないなら 同じ」を引用しています。 今夜 プロデューサーのYaffleと「でっかい声出したい」をテーマに作った曲。実際に2人で、でっかい声を出し合ったおかげですごい仲良くなりました(笑)。リリックは、世界にいろんなニュースが飛び交う中で、もし明日世界が終わるなら自分はどんな行動をするだろうと考えながら書き始めたもの。Yaffleと話し合う中で、それを直接的にではなく、何げない日常にフォーカスして書いたら面白いかもというアイデアが生まれた。そうしていくうちに、たぶんこれは自分にとって、マービン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」なんだと感じるようになりました。混沌とした時代の中で思いを発信しつつ、自分の人生を生きるための歌。“今夜”は今の一番最後であり、明日の手前でもある。みんなそれぞれの“今夜”を重ねながら、“今”を生きている。そんなことを意識させる曲になっています。