叙情的に見せながら、声質を含めどこか乾いた空気が流れているのが井上陽水の個性だが、本作は昭和の歌謡曲的世界観を引用しつつ、どれだけドライに聴かせることができるかを試し、独自の境地へとたどり着いた名品。マイルス・デイヴィスのアルバム「Tutu」のアートワークでグラミー賞を受賞した石岡瑛子によるニューウェーブ色の濃いクールなジャケットだが、中身は濃厚。その後の路線を決定したともいえる名曲"ジェラシー"や、支離滅裂に選ばれた言葉がなんとも刺激的な問題作"My House"など、本作の核となる楽曲を星勝との共同作業で作り上げている。また、盟友・安田裕美によるアコースティックギターが艶っぽい"もうじき夏がくる"や、当時バックを務めていた異能のキーボーディスト、川島裕二が編み込んだコアなテクノサウンド"Yellow Night"など、充実したサウンドがひしめき合う。
- 1973年
- 2017年
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- 1972年