

宮本浩次の真っすぐでパワフルな歌声は、今日も聴く者に元気を与え、背中を押し続ける。エレファントカシマシのボーカルで知られる彼のソロシンガーとしての最初の一歩は、椎名林檎との名義による「獣ゆく細道」(2018年)だった。バンド一筋で30年以上も歌ってきた宮本が個人の活動を始めたことに驚いたファンは多かったが、バラエティに富み、ポップな親しみやすさも備えた歌は人気を博すようになる。以後も東京スカパラダイスオーケストラやKen Yokoyama、Mr.Childrenの櫻井和寿といったミュージシャンとのコラボレーションや、昭和の女性歌手たちの楽曲カバーなど、宮本は自身の歌の世界を積極的に拡大させていく。エレファントカシマシがかけがえのない場であることは前提として、ロックバンドという枠を飛び出した彼はよりポジティブなエネルギーを放つアーティストとして存在している。その豪快な歌が表現する喜怒哀楽の豊かさには、格別の味わいがある。