ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団（LA Phil）は、アメリカの五大オーケストラには含まれないかもしれない。しかし、ハリウッドとのコネクションを持ち、一流のリーダーを見いだすことに長けているこの管弦楽団が、最も華やかなオーケストラの一つであることは間違いないだろう。LA Philは、1992年から2009年に音楽監督を務めて桂冠指揮者となったエサ=ペッカ・サロネンと、2000年から2017年に最高責任者を務めたデボラ・ボルダ（Deborah Borda）の時代に、ロサンゼルスのダウンタウンに新設されたウォルト・ディズニー・コンサートホールに拠点を移し、母国において最も現代志向で革新的なオーケストラとしての評価を確固たるものにした。 1919年に創立されたLA Philは、LPの時代に、1962年から1978年まで音楽監督を務めて名誉指揮者となったズービン・メータと、1978年から1984年に音楽監督を務めたカルロ・マリア・ジュリーニの下で頭角を現し、1985年から1989年に音楽監督と首席指揮者と務めたアンドレ・プレヴィンによってさらに名声の輝きを増していった。2008年にイギリスの権威ある音楽雑誌『グラモフォン』が選定した世界のオーケストラランキングでは、見事8位に食い込んでいる。その翌年の2009年には、当時まだ20代だったベネズエラの新星、グスターボ・ドゥダメルを音楽監督に迎えたことで音楽界に衝撃を与えた。また、20世紀や21世紀の作品をプログラムに取り入れるなど、冒険心をもってレパートリーを開拓する姿勢でも注目を集めている。さらには、地域社会との関わりという面においても、ドゥダメルの知名度とカリスマ性によって、ロサンゼルスに多く住むヒスパニック系の人々にアプローチすることに成功している。