アントニオ・パッパーノ

アントニオ・パッパーノは、オペラに広く精通する指揮者として大きな称賛を集めている。パッパーノは1959年に、イギリスのエセックス州エッピングで、労働者階級に属するイタリア人の両親の下に生まれた。13歳の時、一家はロンドンの公営住宅からアメリカのコネチカット州に移り住む。この地で、母親はオフィスの清掃をし、父親はレストランで働きながら歌を教えた。父の教え子たちのためにピアノを弾いていたアントニオは、21歳の時にニューヨーク・シティ・オペラのリハーサルピアニストの仕事を始める。その後、名指揮者ダニエル・バレンボイムのアシスタントを経て、1987年にNorwegian National Operaでプッチーニの『ラ・ボエーム』を指揮してデビューを飾った。1990年には同劇団の音楽監督に就任。1992年からの10年間はブリュッセルのモネ劇場で音楽監督を務めた。2002年、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスに音楽監督として迎え入れられた彼は、2005年からサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の音楽監督も兼任。2012年にはイタリア共和国功労勲章を受け、また同じ年、エリザベス2世からはナイトの称号を授与されている。見せかけの派手さはないものの、エネルギッシュな指揮者であるパッパーノの特徴の一つは、歌手への理解が深いことだ。そのような流儀は、両親がオペラの国、イタリアの出身であることに起因するものであり、また彼が持つ信念のたまものであろう。