アンドレ・プレヴィン

多様なジャンルで素晴らしい才能を発揮した20世紀の音楽家アンドレ・プレヴィンは、1929年にベルリンのユダヤ人家庭に生まれた。6歳でベルリン高等音楽院に、9歳でパリ音楽院に入学するも、ナチスの台頭するヨーロッパを離れ、家族と共にアメリカのロサンゼルスに移住する。ここでカステルヌオーヴォ=テデスコらに師事して学びを深めたプレヴィンは、映画会社MGMの作曲家兼指揮者となり、『Irma la Douce』と『マイ・フェア・レディ』の編曲でアカデミー賞®に輝き、『Bad Day at Black Rock（邦題：日本人の勲章）』や『Elmer Gantry』ではオリジナルスコアを手掛けた。このようにハリウッドで早々と成功を手にしたプレヴィンだったが、彼の野望は10代から注目を集めていたジャズピアニストとしての活動とクラシックの指揮者という二つのキャリアを並行して積み上げることにあり、1950年代には巨匠ピエール・モントゥーの下で指揮法を学んでいた。そして1968年から1979年にかけてはロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、後期ロマン派のレパートリーやイギリス音楽の演奏で称賛を浴び、指揮者としても高い名声を得た。またプレヴィンは、BBC Oneの『André Previn’s Music Night』に出演し、アメリカに戻ってから取り組んだピッツバーグ交響楽団と『Previn and the Pittsburgh』に登場するなど、テレビ番組で視聴者とコミュニケーションを取ることも得意としていた。作曲家としては、映画音楽の他にも、名手ジョン・ウィリアムズのためのギター協奏曲、5番目の妻アンネ=ゾフィー・ムターのためのバイオリン協奏曲、オペラ『A Streetcar Named Desire（欲望という名の電車）』などの優れた作品を遺し、2019年に89年の生涯の幕を閉じた。