歌劇「イル・トロヴァトーレ」全曲

歌劇「イル・トロヴァトーレ」全曲

ソプラノ歌手のマリア・カラスが主要な歌劇場で活躍したのは、1950年代の半ばから1960年代の半ばにかけてのわずか10年間ほどだったが、オペラ界に忘れがたい印象を残した。ステージで人々を強く引き付ける存在であったカラスは、スタジオにおいても単に素晴らしい歌手であるだけでなく、役柄の魅惑的でドラマチックなキャラクターを見事に表現した。彼女はそのほとんど無限のダイナミックレンジを生かして徹底的に楽曲に貢献する、“声”という最も素晴らしい楽器を手にしていたのだ。ヴェルディの作品の中でも演奏家に対する要求がとりわけ高いとされる名作オペラ『イル・トロヴァトーレ』のレオノーラは、すぐにカラスを象徴する役柄の一つになった。そうなった理由は、ヘルベルト・フォン・カラヤンやミラノ・スカラ座管弦楽団/合唱団と共演した、この1956年の録音を聴けば分かる通りだ。第4幕における吟遊詩人マンリーコ役のジュゼッペ・ディ・ステファノとの切ないデュエットでは、カラスの歌声の清らかさと強さが余すことなく発揮されている。また第1幕のソロ、「おだやかな夜、美しい月が」の見事にコントロールされた歌唱は、思わず呼吸をするのを忘れるほどスリリングだ。

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