現代屈指のチェリストであるヨーヨー・マの演奏家人生において、バッハの歴史的名作である一連の『Cello Suite(無伴奏チェロ組曲)』が最も重要なレパートリーの一つであることは間違いない。幼い頃から類いまれな才能を発揮した彼が初めてこの名曲をレコーディングしたのは20代の後半、1982年のこと。そして、ヨーヨー・マはそれ以降も同曲にその時々の思いを注ぎ込むかのようにして、1994年から1997年にかけて2度目の、2017年に3度目の録音を行ってきた。本作は1982年の最初の録音であり、リマスタリングされたことによってより鮮やかなサウンドで楽しめるようになっている。この巨匠が当初から、並外れたテクニックと、高い知性や深い人間愛に裏付けされた豊かな表現力を持っていたことは言うまでもないが、改めてこのアルバムを聴いて、2回目、3回目の録音における演奏と聴き比べてみると、新しい発見があるかもしれない。例えば、『第1番』の「Prélude」における間合いの取り方の違いによるイメージの差異を味わうだけでも興味深い音楽体験となるだろう。
- アイザック・スターン, イツァーク・パールマン & イギリス室内管弦楽団
- Various Artists
- ヨーヨー・マ & ローマ・シンフォニエッタ
- イギリス室内管弦楽団, ザグレブ室内合奏団 & ウィーン国立歌劇場管弦楽団