1、2作目は荒くれ者がひしめく壮大な物語を描いた作品だった。だがスプリングスティーンは『Born to Run』でついに殻を破り、そうした物語をコンパクトにして受け入れやすくした。後に本人も指摘しているように、タイトルトラックの「Born to Run」では前作が持つインパクトはそのままに、歌詞もサウンドも力強さと感情がコンパクトにまとめられている。悪名高きフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドを、より生々しく、ファンタジー風に仕上げた『Born to Run』は、爽快感、傷心、奥深さ、悲壮感を一度に感じられる作品となり、この瞬間にパフォーマーとして、そしてソングライターとしてのスプリングスティーンが決定付けられた。