

宇宙の神秘と生々しい感情が交錯する、最強ロックバンドのさらなる新境地。 いまや最強ロックバンドとの呼び声も高いミューズは、これまでも常に宇宙との交信を試みるような音楽を作ってきた。それを踏まえれば、彼らの10作目のアルバムタイトルが、1977年に受信した地球外生命体からの交信と思われる無線信号に由来していることは当然と言えば当然だ。しかし、『The Wow! Signal』は単なる未知との遭遇にとどまらない。これは宇宙の神秘と、ミューズ史上最も生々しい歌詞の楽曲が交錯するアルバムなのだ。 臆することなく壮大な問いを投げかけ、自ら導き出した答えもまた壮大なサウンドに乗せてきたシンガー兼ギタリストのMatt Bellamyは、私生活の激変を回顧すると同時に、宇宙における自身の存在について思索を深めていく。その結果、近年のミューズの作品の中でも際立って魅力的なアルバムが誕生し、ここではどれほど壮大なサウンドが響き渡る瞬間でも、その根底には胸を打つ切なさが息づいている。 もちろん、ミューズであるが故に、「The Dark Forest」「Cryogen」「The Sickness In You & I」では危険度レベルを設定したくなるほど激烈なロックオペラ的サウンドを聴くことができる。さらに、強力なフック満載のうねるようなスペースポップの「Hexagons」や、洗練されたメロディが映える1980年代のグルーヴの「Unravelling」「Nightshift Superstar」、そして優しく胸を締め付けるラスト曲「Space Debris」のようなオーケストラによる壮大な楽曲まで、多彩なアプローチが並ぶ。 2022年の『Will Of The People』で、自らが恐るべきロックバンドになり得ることを再認識したミューズは、ここで再び本来のスケール感あふれる本領を発揮している。さらに外部の手も借りて、サポートメンバーのDan Lancasterを共作者兼プロデューサーに迎え、悪魔的なアンセム「Hush」ではポップ界のスーパースター、エリー・ゴールディングのボーカルを取り入れている。そうしたすべてが、この宇宙で私たちは決して一人ではない、という『The Wow! Signal』全体を貫くテーマと見事に共鳴している。10作目のアルバムにして、ミューズは今なお新たな境地を切り開き続けているのだ。