トータルの作品性にとらわれず、フラットな視点でウェルメイドなポップ感覚とくるりの個性をナチュラルに共存させた6曲からなるEP。『琥珀色の街、上海蟹の朝』以来、2作目のEPとなる本作は、ストップモーションアニメシリーズ主題歌の「ポケットの中」をはじめ、映画主題歌の「愛の太陽」、ドラマ主題歌の「八月は僕の名前」など、依頼を受けて制作された楽曲を軸に構成されている。2021年の前作アルバム『天才の愛』では多様性に富んだ作品世界から濃密な個性を浮き彫りにしていたが、ここではEP全体の整合性を意識せず、ニュートラルな地平において、普遍的なメロディと歌詞、くるりらしい端正なバンドアレンジの融合が最新のモードを体現している。石若駿のドラムやピアノ、管楽器、パーカッションなどを交えた「Smile」や懐かしくみずみずしい「宝探し」、叙情性豊かな「真夏日」と、くるりの音楽に内包された優しさや穏やかさ、力強さが美しい響きへと昇華されている。