初期から撮り続けてきた篠山紀信によるバストアップのジャケット写真も鮮烈なこのアルバムは、彼女の最高傑作との呼び声が高い。レコードのA面に当たる前半は『曼珠沙華の章』と題された6曲で、そのトップに置かれたのはのちに国民的な名曲となる「いい日 旅立ち」。さらに阿木燿子と宇崎竜童による濃密なラブバラード「曼珠沙華」では百恵の独白をフィーチャーしている。そして後半は『無垢の章』とされ、予告編的な7曲目を含め2度にわたり登場する「横須賀サンセット・サンライズ」のリリシズムが心を打つ。室内楽的なアレンジが絶妙な「ひといろ足りない虹のように」など、自伝的な感触もあるこのアルバムは、彼女の一つの到達点を感じさせる仕上がりで、二十歳になる直前に発表されたことにも大きな意味がある。オリジナルアルバムの中では最高のセールスを記録した。