

五條人:ソリッド・ゴールド・ヒッツ
「このプレイリストの名前は、えーと…」と五條人(Wutiaoren)のフロントマン/アコーディオン奏者のRenkeが迷っている横で、ボーカリスト/ギタリストのAh Maoは、「よし、『五條人のソリッド・ゴールド・ヒッツ)』にしよう」と、Apple Musicに告げた。自身の楽曲が追加され、タイトルもギリギリになって決定した。そんな大らかなところがあったからこそ、五條人は2020年においてもフォークロックを鳴らし続けられたのかもしれない。人気ロックバラエティ番組『The Big Band』で当初、特別な存在として注目を浴びた彼らは、土壇場の変更で失格に。しかし、多くの要望が功を奏して復活を遂げ、最終的に2位を獲得した。
世界中のバンドがステージに立てずに苦労していた時期に、五條人はインディーミュージックのリバイバルブームに乗って、中国語の方言である閩南語(びんなんご)で歌うフォークロックを多くの人々に届けた。「今回のパンデミックはみんなに影響を与えた。それは僕らも同じだ」と、Renkeは語る。「今年の前半はたくさんのライブが中止になった」。「そう、海外公演もね」とAh Maoは加える。その代わりに、日本をはじめドイツ、ナイジェリア、トゥバに至る、さまざまな国の楽曲をフィーチャーしたこのプレイリストで、彼らは私たちを世界ツアーに連れて行ってくれる。『The Big Band』でブレイクするまで、2人はレコード販売の仕事をしていたという。2部構成となったプレイリストは、アバンギャルドなロックから実験的なジャズ、ヒップホップやポップまで網羅しており、熱狂的な音楽ファンならではの幅広いジャンルにわたる嗜好を反映している。「僕は幼い頃、たくさんの音楽に触れていたんだ」とRenkeは語る。「父さんがカラオケパーラーを経営していたからね。当時は大きなレーザーディスクを使っていた。見たことある?」
Renkeが選んだ曲の多くには隠されたエピソードがある。たとえば、五條人が影響を受けたアーティストとして挙げる台湾の人気フォークグループ、生祥樂隊の「動身」について、「僕らは一度、広州で行われた彼 (Lin Sheng Xiang) のライブでオープニングを務めたんだ。彼は客家語(はっかご)で歌っていて、曲のアレンジがとても興味深かった」と、Renkeは語る。また、熱烈な映画ファンでもある2人は映画音楽にも精通しており、ヴィム・ヴェンダース監督の『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』や三宅純の「Lillies of the Valley」、ウディ・アレン監督の『スコルピオンの恋まじない』にWilbur de Parisの「In A Persian Market」、さらにはマリリン・モンローによる「The River of No Return」などのサウンドトラックもピックアップしている。
プレイリストの第2部はAh Maoが担当し、フランク・ザッパによる不朽の名曲「The Torture Never Stops」から始まる。「彼はこの曲を披露する際、特に1970年代には、毎回パフォーマンスを変えていたんだ。でも、僕は1977年バージョンが気に入っている」と語る。また、クラウトロックのファンでもある彼らしく、ゴングの「Model Village」を選んだほか、ジム・ジャームッシュ監督の映画『ゴースト・ドッグ』にフィーチャーされたアイス・キューブの「It Was a Good Day」にも触れている。「とてもユニークなラップソング。最初から最後まで、全てエレキギターで展開するんだ。(アイス・キューブは)たくさんのメロディックな要素を加えている」と彼は解説する。友人でもある2人はお互いの曲を共有することに夢中で、気がつけば自分たちの曲を入れ忘れていた。Ah Maoは「すごくクールな物語だから」と「爛尾樓」を、Renkeは「ピアノがプラスチックのようなトーンなんだ」と話す「梦幻丽莎发廊」を選んだ。
2021年の五條人には、多くの予定が待ち構えている。シングル「Globe」に続いて、今回のプレイリストと同じくらい多彩なスタイルを取り入れたニューアルバムをリリースする予定だ。「みんなが幸せで喜びに満ちた旧正月を過ごせますように」とRenkeは語る。「新年に向けて僕が一番よく口にすることは、“全てがスムーズに進みますように”ということかな」とAh Maoは加えた。