

ロシアの伝統的な音楽は非常に長い歴史を持っており、その始まりは村々の素朴な暮らしの中で自然発生的に歌われるようになった民謡だと考えられている。一方ロシア正教においては楽器が悪魔による発明品だとされていたため、歌以外の音楽はかなり長い間禁止されていた。そんな背景によるものなのか、器楽曲が作曲されるようになってからのロシアの作曲家たちも、民謡を下敷きにしたものも含め、民謡のように気軽に口ずさめる印象的で忘れ難いメロディを生み出す、本能的な感覚を持ち続けているようだ。彼らが生み出した交響曲、協奏曲、バレエ音楽、室内楽の中に世界的な人気を誇る名作が多くあるのも、それらの音楽の中心に普遍的で魅惑的なメロディが息づいているからに違いない。