

カルガリー出身のTate McRaeは2016年に、リアリティ番組『So You Think You Can Dance』で決勝に進出した初のカナダ人となった。しかし、当時の視聴者は、13歳の天才ダンサーが歌の才能も兼ね備えていることなど知る由もなかった。その翌年、McRaeはピアノの弾き語りで披露した失恋バラード「One Day」をネット上にアップし、傷つくことを恐れず、深く心を打つ詩的語法に恵まれたボーカリストであることを世に知らしめた。「私は他人に対してすぐに心を開く人ではないので、曲作りは間違いなく自己表現の手段となっている」とMcRaeはApple Musicに語る。「一度仲良くなると何でも話すタイプで、歌詞と同じように、とても素直で正直になる」
「One Day」のバイラルヒットとRCAとのレコード契約によって、McRaeはその飾り気のないソングライティングを、雰囲気のあるシンセサイザーやトラップビート、R&Bのプロダクションでドレスアップし、ビリー・アイリッシュに対抗するカナダ人アーティストとしての立ち位置を確立した。2019年には、アイリッシュがMcRaeのドラマティックなシングル「tear myself apart」を共作している。そして2020年には、世界的なブレイクのきっかけとなった「you broke me first」や、惑わされるほど陽気なフォークポップソング「r u ok」などのシングルをリリース。歌詞につづった厄介な感情と同じくらいに不定形で予測不可能なサウンドを駆使し、他のアーティストとは一線を画するモダンポップのアーティストとして台頭した。ここでは、このプレイリストに収録された代表曲の制作秘話を、McRaeがApple Musicに語ってくれた。
you broke me first
私が書くことは、すべて直感から来るストレートな感情。この曲では、自分の価値を知ることや、人生における有害な状況から前へ進むことについて書いた。私は他人に生き方をコントロールされるべきではないと信じていて、それが「you broke me first」のテーマになった。複数の人について書いたから、曲の中にいくつもの層があって、さまざまな感情が湧いてくる。悲しい曲を書くつもりなんてなくて、最高の気分でスタジオ入りしたことを覚えている。4週間後に聴き返してみるまで、どれほどディープな曲かは自分で気付いていなかった。きっとセッションの間はずっと、私の潜在意識の脳が話したり、書いたりしていたのだと思う。
r u ok
こんな曲を自分が書くなんて思ってもいなかった。とても生意気で怒りっぽいトーンで、自分とは真逆だと思うから、あのような視点に入り込むのはチャレンジだった。歌詞にはたくさんの感情的な意味が込められていて、それと同時に、とてもトラッピーで明るくて対照的なプロダクションになっているところが大好き。
lie to me
Ali(Gatie)と私はスタイルは全然違うのに、なぜかとてもうまくかみ合う。私たちは2人とも、この曲の作詞とレコーディングにすべての感情を注ぎ込んだ。InstagramのDMから始まり、世界的なパンデミックとなり、Zoomでやり取りしてレコーディングと編集を行い、最後にようやく会うことができた。すべてが一つにまとまった時は、本当にクールな瞬間だった。