

「本当に普通なんです、私」。シンガーのAIは、自身についてApple Musicに語る。おおらかな愛に満ちた歌が幅広い層に支持されているAIだが、彼女は自分のことをそれほど完璧だとは思っていない。「もし私が優しいなら、それは一緒にいる人が優しいから。あなたが楽しいなら、一緒にいる私も楽しい。それだけのこと」。この言葉から、彼女の代表曲「ハピネス」(2011年)を思い浮かべる人は多いだろう。この曲でAIは「君が笑えば すべてが良くなる」と歌っている。 アメリカで下積み時代を経験したAIは、日本のレコード会社からオファーを受けたことにより帰国し、2000年にメジャーデビュー。当初はラップを中心とした楽曲も発表していたが、次第にソウルフルな歌声を生かしたバラードナンバーが増え、多くのファンを引き付けた。代表曲の一つである「ハピネス」は、2011年に東日本大震災が発生し、日本全体が深い悲しみに覆われていたころにCMソングのオファーを受けて制作した。その制作に入る前、タイアップする企業のスタッフと話し合う機会があったとAIは振り返る。「みんな暗い顔をして『日本をどうにか元気にしてほしい』と口々に言って、涙ぐんでる人もいた。世の中に助けてほしい人たちがいっぱいいて、その人たちのことを思う気持ちがすごく伝わったから、私も絶対にその思いを曲に表さないと、と思った。いろんな人の思いが私にこの曲を書かせてくれたんです」 ソウルフルなバラード「Story」(2005年)もAIのヒストリーには欠かせない。「これまで一番歌ってきた曲で、ずっと歌い続ける中でだんだん感覚が変わってきたところもある。曲を作った当時は私を助けてくれる周りの人たちに感謝の気持ちを伝えていたけど、今は聴いてくれるすべての人に向けて『絶対大丈夫だから。今は大変でも、絶対良くなるから生きていてね』と思って歌ってる。デビュー当初は自分のことで手一杯だったけど、次第にそのケアを自分だけでなく、他の人にも向けられるようになったのかな」。AIは多くの人と出会い、家族や仲間に支えられ、深く大きな愛を育むことで進化を続けた。 AIの周りには常に人の輪があり、その交流を通じて国内外のアーティストと多彩なコラボレーションも行っている。「NAKAMA」(2025年)は、『ドラゴンボール』を愛してやまないAIとZeddが、テレビアニメ『ドラゴンボールDAIMA』のエンディングテーマとして制作した。「オファーがあると聞いた時、涙がぶわっと出た。まさか自分に声がかかるなんて信じられなくて。だってあの『ドラゴンボール』だからね!」。コラボレーションが実現する時はいつも不思議な縁を感じるというAI。その縁を引き寄せるのはAIの抱く大きな愛だ。このプレイリストで、その歌声に込められたたくさんの愛を感じてほしい。