流麗に奏でられるピアノの演奏と、一聴すると穏やかだが力強く凛とした歌声、そして、その奥底に流れる骨太で強い意思を感じさせる言葉で、時代をつづれ織るシンガーソングライター。元シュガー・ベイブのベーシストで、解散後は翻訳家として活躍する寺尾次郎を父に持つため、大貫妙子に通じる都会的なポップスの文脈で語られることあるが、彼女の音楽に通底するのは、人間として生きる上での熱情や、社会に対する傍観者ではない視点で描き出される人肌の感覚だ。洗練されたポップソング"リアルラブにはまだ"や、市井の人々を描き出した"アジアの汗"など楽曲の振り幅の大きさこそが、彼女を唯一無二の存在にしている理由だろう。