はじめての ヤン・リシエツキ

はじめての ヤン・リシエツキ

ヤン・リシエツキは1995年カナダのカルガリー出身だが、彼の演奏を聴くと、19世紀初頭のヨーロッパで生まれたピアニストなのではないのかと思えてくる。リシエツキの軽やかなタッチが、ショパンの繊細な装飾音や夢見心地のハーモニーが持つ、気まぐれにたゆたうような風情を見事に捉えているからだ。その魅力を余すところなく伝えてくれるリシエツキの音源を聴けば、彼が間違いなくトップクラスのピアニストであることが分かるだろう。そんなリシエツキは、ドイツ・グラモフォンから、ショパンをはじめ、モーツァルトやシューマン、メンデルスゾーンといった作曲家たちによるオーセンティックな名曲を録音したアルバムを、コンスタントにリリースしている。その中にはショパンの協奏曲も含まれているのだが、驚くことに彼が初めてオーケストラと共演したのはわずか9歳の時だったという。またリシエツキによるモーツァルトは遊び心にあふれ、シューマンの楽曲の演奏は知性と気品に満ちている。