

1997年にイタリア出身のマエストロ、クラウディオ・アバドによって創立されたマーラー・チェンバー・オーケストラは、モーツァルトによるオペラの大作『ドン・ジョヴァンニ』の「序曲」や、ベートーヴェンによる威厳に満ちた協奏曲『Concerto for Piano and Orchestra No. 4 in G Major』を、マーラーを思わせるような思慮深さと重厚感をもって奏でる。そしてもちろん、このアンサンブルは、名前の由来となった作曲家であるグスタフ・マーラーの作品において、快活なメロディとしばしば非常に大きく変化するムードとを対比させながら、一段と生き生きとした演奏を聴かせてくれる。マーラー・チェンバー・オーケストラのこうしたアプローチは、圧倒的なパフォーマンスでリスナーを刺激するピアニスト、ダニール・トリフォノフとの共演においても存分に発揮されており、凝縮された雰囲気を醸し出しながらも、静かな場面ではまるで宙を舞う羽のような自由さを表現している。