

ウィントン・マルサリスに代表される1980年代の”モダンジャズ回帰ムーブメント”をけん引したトランペッター。ペンシルバニア州フィラデルフィア出身、ジャズとクラシックの基礎を学びながら、10代半ばから多くのセッションに参加して頭角を現し、大型新人として注目を集める存在に。1980年前半にマイルス・デイヴィスと出会い、親交を深め、自己のスタイルを確立し、1987年に初リーダー作をリリースして当時のジャズ界の第一線に躍り出た。そのクールで浮遊感に満ちた演奏は、1960年代のモードジャズ全盛期の作品から多大な影響が感じられる。1991年、死の直前のマイルス・デイヴィスがモントルー・ジャズ・フェスティバルでクインシー・ジョーンズと共演した歴史的ライブでは、ソロプレイヤーとして演奏をサポート。またマイルスの死後にハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスという黄金のメンバーによって行われた追悼ツアーにも参加し、その演奏はアルバム『A Tribute to Miles』としてリリースされ、グラミー賞の栄誉に輝いた。1994年からは、大手ワーナー・ブラザーズからリーダー作品をリリース。近年は若手ミュージシャンとともに新たなアコースティックジャズを模索していた中、2020年3月31日、59歳でこの世を去った。このプレイリストでは、彼のキャリアを代表する演奏をセレクト。時代に流されずに帝王マイルスをひたむきに追い続けたトランペットの響が胸を打つだろう。