ZARDはまさに時代を超えて輝き続けるポップユニットだ。そもそも1990年代の日本のポップミュージック界において坂井泉水は外すことができないボーカリストだが、その時代以降も高い人気をキープし、音楽性が評価され続けているのは並大抵のことではない。そして何よりその歌の魅力はまったく色あせることがないまま、人々に活力を与え続けている。そうしたポジティブな認識が世の中に浸透したのは、坂井が2007年に急逝してからのことかもしれない。この悲しい出来事以後、各地のファンからは彼女を悼む声やZARDの歌にいかに元気をもらったかというエピソードがあちこちで、無数に語られていった。実際に「負けないで」「揺れる想い」（いずれも1993年）、「マイ フレンド」（1996年）といったヒット曲に励まされたという反響は当時も、そして21世紀になっても絶えることがない。ZARDの音楽は、1990年代の辣腕（らつわん）ミュージシャンたちが洋楽ロック／ポップの感覚をJ-Popに還元させたポップ工房とも見ることができる。その高い洗練度は、当時の音作りを反映したものでありながら、普遍的な響きをたたえている。これは、坂井による歌詞と歌声も同様だ。活動当時はテレビ出演もライブもほとんど行っていないのに数多くのタイアップ曲を歌い、ミリオンヒットを連発していただけに、どこかミステリアスな存在だったが、こうして熱い支持を得続けている事実を思うと、彼女の歌がリスナーたちにしっかりと届いていたのが分かる。そしてその熱は、これからも広がりはすれど、冷めることはないだろう。ZARDの歌は、エバーグリーンなのだ。