Swae Lee

2016年にリリースされた代表的シングル「Black Beatles」で、ミシシッピの兄弟デュオ、レイ・シュリマーは臆面もなくビートルズの正統な後継者であることを自ら認めた。だが「Black Beatles」は、ロック界でもっとも神聖なバンドに彼らの痕跡を刻んだだけでなく、兄弟2人が生み出すクリエイティブな魅力を世に示した。兄であるSlim Jxmmiの荒々しく誇張的なフロウとは対照的に、Swae Leeはいわばレイ・シュリマーにおけるポール・マッカートニーのようだ。自己主張の強い歌詞にもスウィートで遊び心あふれる魅力を注ぎ込むことのできるメロディの使い手である。1993年にカリフォルニアで生まれ、ミシシッピ州テューペロで育ったSwaeことKalif Brownが最初に手腕を発揮したのは、2014年の「No Flex Zone」だ。一度聴いたら忘れられないこの曲で、レイ・シュリマーはその名を全米にとどろかせ、たちまち2010年代中期のトラップサウンドの中で頭角を現した。だが「Black Beatles」が世界中のチャートをにぎわせた後、Swaeはレイ・シュリマーの成功を足掛かりにソロの道へ進み、そこでも活躍を見せた。“feat. Swae Lee”というクレジットはまぎれもないヒップホップの一つのシンボルとなった。2017年にはフレンチ・モンタナのダンスホールチューン「Unforgettable」にゲスト出演し、甘美なボーカルで楽曲のタイトルが示す以上に“忘れられない”ものにした。一方で、2018年公開のCGアニメ映画のテーマソングにもなった甘いトロピカルなデジポップ「Sunflower」では、ドリーミーで多幸感にあふれるパフォーマンスを披露。一緒にクレジットされていたポスト・マローンも顔負けの存在感を発揮した。Swaeはソングライティングの才能でヒップホップシーン以外にも進出し、マドンナやエリー・ゴールディングらも彼の自然体のスタイルを買っている。ソロでの成功にもかかわらず、Swaeは依然としてレイ・シュリマーにも力を入れている。2018年にリリースした初のソロアルバム『Swaecation』はレイ・シュリマーの三部作アルバム『SR3MM』の一つの章として発表された。この作品のリリースは、Swaeの陽気で穏やかなペルソナと、兄のタフなトラップスタイルのコントラストがさらに際立つことを決定づけたが、歴史に名を残した2人のビートルズは、未だ躍進を続けている。