2019年のアルバム『Hotel Diablo』に関するApple Musicのインタビューで、Machine Gun Kellyはどん底に落ちた夜のことを語った。彼は台所にいて、隣の部屋では娘が寝ていた。「もう俺の体内には、活力や幸福感を与えてくれるセロトニンが残っていなかった」と彼は言った。自分の置かれている状況、自分の作品、自分の人生など「気付けばこれらすべてを消し去りたいと思っていた」。彼はその夜、死ななかった。だが死のうとしたことを曲（「Glass House」）にした。楽に聴ける曲ではない。曲の途中で彼は床の上に血をたらしながら気を失う。しかし、彼の音楽を不穏なものにさせるこうした極端さは、同時にファンにとっては希望の光であり 、心の中の最も暗い闇に光を当てるアーティストとしての存在感につながっている。1990年、ヒューストンに住むキリスト教伝道者の両親の下に生まれたMachine Gun Kelly（本名Richard Colson Baker）は、主にクリーブランドで育った。犯罪と工業地帯の衰退が影を落とすこの街の雰囲気が、彼の曲の背景となっている。ドラッグ、幼少期のトラウマ、自己否定。彼の音楽は決して安易な解決法を示してはくれない。だがそのサウンドはダークでありながら、カタルシスの感覚も併せ持つ。苦い薬を飲みやすくするひとさじの砂糖のように、ポップパンクとニューメタルのメロディアスな要素が気骨のあるヒップホップとの橋渡しをしているのだ。この楽曲はラップなのか、ロックなのか。ニルヴァーナやLINKIN PARK、またはエミネムなのか。そうした区別は、トリッピー・レッドや故ジュース・ワールドといった仲間を含むMachine Gun Kellyの世代にとっては時代遅れだろう。彼らがここに存在するのは感情のためであり、少なくとも感情を吐き出すという誓いのためなのだ。