ジュース・ワールド

シカゴの郊外で生まれたジュース・ワールドことジャレッド・ヒギンズは、学校の廊下でフリースタイルラップを披露するような少年だった。ジュース・ワールドという名前は、2Pacが出演した1992年の映画『ジュース』に由来しており、10代のころからこのMCネームで楽曲制作を始め、スターへの道を目指した。「僕にとって最大の恐怖は、自分が目指すゴールにたどり着けないこと」と、2018年のUp Nextと連動したドキュメンタリーの中で、ジュース・ワールドはApple Musicに語っている。「でも、それが自分の最大の強みでもある」オートチューンを駆使したボーカル、ポップパンクの影響、チーフ・キーフらシカゴのドリルミュージックに触発されたビートなど、ジャンルを横断した彼の特徴的なエモラップは、「Lucid Dreams」や「All Girls Are the Same」といった代表作で発揮されている。そこでは悲しみや後悔、失恋といった感情を、ハッとするほどの正直さで推し量っている。デビュー作『Goodbye & Good Riddance』の発表からわずか5か月後にリリースされたフューチャーとのコラボレーションアルバムは、さながら勝利の美酒に酔った華美なウィニングランだ。また、2019年の3月に発表したセカンドアルバム『Death Race for Love』では、引き続きパーソナルな痛みを掘り起こして最大限のドラマを描き切ってみせた一方、BTSやエリー・ゴールディングらともコラボレーションして表現力の豊かさを示した。そして2019年12月、ジュース・ワールドはシカゴで21歳の生涯を終えた。