初のミックステープを2015年の末に発表したリル・ピープ（本名：Gustav Åhr）は、2年後に薬物の過剰摂取で他界した。彼のキャリアは短かったものの、エモとラップを融合したハイブリッドなサウンドに乗せて生々しい10代の鬱（うつ）を表現し、シーンに多大な影響を残した。1996年生まれ、ニューヨークのロングアイランドで育った彼は、高校を中退後、10代の大半をロサンゼルスでホームレス生活を繰り返して過ごした。オンラインで気の合うコミュニティを見つけたリル・ピープは、最初のトラックの数々をYouTubeとSoundCloudで発表する。それは、BRAND NEWやモデスト・マウスといった2000年代初期のバンドをサンプリングし、ドラッグ、鬱（うつ）、失恋についての抑揚のないラップとトラップビートに織り込んだものだった。陰鬱でありながらどこか美しさを兼ね備えていて、例えば「Beamer Boy」「White Wine」といった曲は子守歌のようでもあり、ある時は、彼が意識の縁をさまよっている様も魅力的だった。彼は自分自身をジョークにするユーモア感覚を持っていたようで、感情を面白いほど退屈しているように描いてみせた。それは彼にとってマイナスではなかったし、メロディの扱い方も理解していた。恐らく彼はそれを、ポップパンクを聴いていたことで習得したのだろう。一連のミックステープを出した後、彼は2017年に『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』を発表し、それに続く『Come Over When You’re Sober, Pt. 2』が死後にリリースされた。「みんなにはいつも俺の音楽のおかげで生きていられるとか、自殺しないでいられてるとか言われるんだ」と、ピープはApple Musicに自身の音楽がファンの人生に及ぼす影響について語っている。「数え切れないほどたくさんのリル・ピープと彫られたタトゥーを見てきた。彼らは本当に献身的で、俺の音楽に自分たちの人生をささげてる。かなりすごいことだよ。衝撃的だよね、でも最高にうれしい。素晴らしいことだし、もし自分の曲が人々を助けているんだとしたら、それが俺が音楽をやっている理由だよ」