シンガーソングライター米津玄師の原点であるハチ。ボーカロイドカルチャーが急速な進化を遂げた2010年代初頭、その中心にハチはいた。1991年、徳島に生まれた彼は中学時代に作曲を始め、2009年に初音ミクを用いた初のボーカロイド楽曲を発表。印象的なコード進行とトリッキーなメロディ展開、ファンタジックでありながら本質を突いたリリックなど、彼の作る楽曲はすべてにおいて高い完成度を誇っていた。旺盛な制作意欲はとどまることを知らず、2010年には2作のアルバム『花束と水葬』『OFFICIAL ORANGE』を制作。その名は次第にネットシーンの枠を超えて広まっていく。2012年からは本名である米津玄師の名義で活動を始め、ボーカロイドプロデューサーとしての活動は止まったように見えたが、2017年に初音ミク生誕10周年に寄せて久々にハチ名義の楽曲「砂の惑星」を発表し、ボカロ愛好家を歓喜させた。また、米津玄師の楽曲にはハチの作品とリンクする箇所がいくつも見受けられることから、米津玄師とハチの表現世界は地続きでつながっていることが分かる。