ポップの神童から俳優プリヤンカ・チョープラーの夫へと転身したニック・ジョナスは、作られたスターという誤ったイメージを持たれることが多い。しかし、ジョナス・ブラザーズのメンバーとしてディズニー・チャンネルに出演していた時期があったとはいえ、彼の音楽的才能やとどまることのない創造性は、決して作られたものではない。1992年にテキサス州ダラスで生まれ、ニュージャージー州で育ったジョナスは、7歳にして初めてブロードウェイミュージカルに出演した。10歳になるころには、初めての作曲を経験。弱冠12歳でColumbia Recordsと契約を結び、兄のケビンとジョセフ（ジョー）と一緒に曲作りを始めた。3人はジョナス・ブラザーズとしてデビューし、2007年リリースのセカンドアルバムでブレイクを果たした。ニックはリードソングライターだっただけでなく、一連のヒットアルバムでたくさんの楽器を担当し、グループは世界的な人気を博した。2009年からはソロ活動を再開し、翌年にNick Jonas & The Administration名義で発表したアルバム『Who I AM』では、見事に成熟したポップロックの作曲スキルを披露。だが、彼が自分の声を見いだしたのは2014年リリースのセルフタイトルアルバム『Nick Jonas』で、初期のイノセントな雰囲気からは距離を置き、ロック、ポップ、そして、ライトなEDMに挑戦した。ジャスティン・ティンバーレイク風のポップR&Bのトラックに、心がうずくようなファルセットを乗せたヒットシングル「ジェラス」で、彼はソロアーティストとしての立ち位置を確立。2016年のアルバム『Last Year Was Complicated』では、トーヴ・ローとのデュエットで大人気となった「Close」などの素晴らしいポップサウンドを生み出した。常に挑戦を続けるジョナスは、舞台や映画、テレビの世界へと活動の幅を広げ、その間に世界で最も有名な俳優の一人と結婚。また、UNICEF、Equal Justice Initiative、ACLUなどの団体に寄付をするなど、慈善活動家としてのキャリアもスタートさせている。