

“狩り”ことベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ第18番』と、グラス、カプースチン、リゲティ、スクリャービンの作品を、一つの演奏会でプログラムするピアニストはほとんどいないだろう。しかし、ユジャ・ワンは2022年4月のウィーンでのリサイタルでまさにそれをやってのけ、その結果、聴衆を見事に魅了した。 ワンの卓越したテクニックは、リゲティのエチュード「No. 6, Automne à Varsovie」の揺れ動くような旋律に魔法のような透明感を与え、「No. 13, L'escalier du diable」にジグザグながらも力強く進んでいくエネルギーを加味している。また、カプースチンによるジャズ風味あふれる『24の前奏曲』の「No. 10」とアルベニスによる『イベリア』の「Lavapiés」においても、ワンは同じような魔法の力できらびやかな音世界を描き出している。 さらに、ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ第18番』において風変わりなひねりや鋭くかつダイナミックなコントラストが登場する場面では、ワンの切れ味のいい演奏が特に際立っており、この歴史的名作に驚くほど現代的な響きを与えている。またブラームスの『3つの間奏曲 Op. 117』の「No. 3 in C-Sharp Minor」におけるうっとりするような演奏はワンの詩的な一面を示し、最後にはグルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』の「Melodie dell'Orfeo」が、この魅惑的なアルバムを幽玄な趣の中で締めくくる。