

Tchaikovsky: Souvenir de Florence, Op. 70, TH 118 (Live from Verbier Festival / 2013)
毎夏アルプスのスキーリゾートで開催されている、スイスのヴェルビエ音楽祭。例年人気と実力を兼ね備えたスター演奏家たちを迎えており、このアルバムでは2013年の素晴らしいパフォーマンスを追体験することができる。チャイコフスキーが1890年に作曲に着手した『フィレンツェの思い出』は4つの楽章からなる作品で、いわばチャイコフスキーからフィレンツェへのラブレターだ。弦楽合奏版で広く知られているが、オリジナルの弦楽六重奏版はより激しく、情熱的な響きを持っている。6人のトップ弦楽器奏者たちは、力強いワルツの第1楽章から心にしみるアリアのような雰囲気を持つ第2楽章アダージョ、そして第3楽章、最終楽章にいたるまで、スコアに秘められた感情の機微を一つ一つ丁寧に描き出し、このロシアの偉大な作曲家が当時抱いていた、あふれるような創作欲求を存分に伝えてくれる。