スタッフメモ “区切り”や“分離”を表す『Partition』という言葉がタイトルに冠された、AwichによるメジャーデビューEP。「私は、世の中の全てはつながっていて“全てはOne”と思っている。最初はそんなタイトルにしようと思っていたんですが、今はコロナウイルスで人々が分裂していたり、これまで以上にBlack Lives Matterのムーブメントが起こったりして、みんなが指さし合い、人間や人種が分断されている状況。元々はみんな一緒であるはずなのに、今やそうとは思えない世界になっている。そこへの皮肉も込めて、このタイトルにしました」とAwichは語る。

本名の漢字の直訳である“Asia Wish Child”を略してステージネームにしたという、沖縄生まれのAwich。高校を卒業するとアメリカへの留学と現地での結婚を経験し、1児をもうけた後に夫が射殺されるという数奇でヘヴィな運命をたどった女性でもある。これまでにも、愛する人を失った悲しみや喪失感からの脱却などを歌詞に表して、多くの支持を得てきた。収録された7曲にも、それぞれにAwichならではの信念と哲学が宿る。「メジャーデビューにあたっては、ファンの子も“一緒に成長した気がする”とすごく喜んでくれている。今回、私を知らない人にも自分の曲を聴いてもらえるにはどうしたらいいんだろう?とプロデューサーのChaki Zuluさんと考えながら作りました」。ここでは彼女が収録曲について1曲ずつ解説してくれた。

Sign
「全部引っくるめて楽しんでます」という自分のアティチュードについて歌った曲。この曲を、EPの最初に持ってきたかったんです。「私はいろんなことをやってのけるけど、いちいち騒ぐな。そして、基本的にふざけてますよ」という態度もメッセージの一つ。フックはチアリーダーみたいなかわいい感じにもチャレンジして、あえて肩の力を抜いたラップにしています。“サイン”というアイデアは前からあって、メジャー契約のサインや、示しを表すスピリチュアルなサインという意味も込めています。

Shook Shook
女性はもちろん、いろんな分野でのマイノリティやLGBTQの子たちからもいい反応をもらっている曲です。私が出演したヒップホップのイベントで、男気ムンムンのラッパーたちが出演した後、最後にトリとして女である私が出てきたとき、あっけに取られていたお客さんの顔が見えたんですよ。その体験が基になっています。日本やアジアの国だと、まだ「女が1人でトリは張れないだろ?」って思われることも多い。何が正解かは分からないけど、女だからという理由で勝負したいのにできない人たちがいたら嫌だなと思っているんです。私も「女の中では一番」って言われると「いやいや、もっと勝負できるわ!」と、自分の中にある炎みたいなものが燃えてくるので。

Patrona
私の旦那が死んだときのことを、より劇的に歌っている一曲。ダークかつドラマチックで、「仇(かたき)を取ってやる」とリベンジに燃える女のイメージ。「私の仲間や家族に手を出すやつは許さん」って。こういう感情は彼が死んだ直後からあって、そのときにはいろんな感情があった。「何で私を一人にしていくの?」って、旦那に対する怒りさえもありましたね。そのときは、人生の底の底にいた、という感じ。歌詞には孫武やマキャベリの名前も入っていて、「Shook Shook」のミュージックビデオでも、彼らの言葉を引用しているんです。孫武の『孫子兵法(The Art of War)』が大好きで、死んだ旦那とよく読んでいました。

Revenge
これは、「Patrona」と対になっているんです。前曲でダークサイドを歌った後に「本当のリベンジって何?」と気づく話になっている。結果、自分が幸せになることこそが最大のリベンジなんです。相手を傷つけても、本当にそれで何かが報われることはない。生前の旦那がよく言っていた“Keep On Going”という言葉や、許しということの大切さに気づいたから「許せばいい。それだけ。」というフレーズを入れています。私にとってとても大切な曲です。

Awake
今の世界の状況や、それに対して私が思っていることを歌った曲。EPを作り始めたころは、2020年になったばかりでみんなウキウキしていた。もちろん、コロナウイルスもまん延していなくて、ジョージ・フロイドさんも殺されていなかった。このEPは、まさに激変していく中で作っていった作品で、この移り変わりを表現した曲を作らない選択肢はなかった。今、本当に大事な時期だからいろんな人に聴いてほしいし、理解してほしい。だから、あえて分かりやすい言葉を選んで作った曲でもあります。歌詞には娘の名前も入れているんです。アメリカにいると父親がいないことが当たり前になっていて、そのこと自体はいいとも悪いとも思わない。でも、そんな状況下で頑張っているにもかかわらず、お母さんだけが指さされることもあって、そういう大人の様子を見ると子供は何を信じればいいのか分からなくなる。だから、そういうトピックも入れたかったんです。

Good Bye
私とプロデューサーのChakiさんが思う歌謡曲を作ったのが、これ。一筋縄じゃいかない恋愛を歌っているんですけど、例えば、私のライフスタイルは毎日ライブして、朝までクラブで遊んで、自分がいいと思う時間に起きてスタジオに行って。でもそれはちょっと普通じゃないし、一般的な社会と比べるとクレイジーだなってことも分かっている。故に、自分の好きな人にも心配を掛けてしまうこともいっぱいある。普通の女の子と付き合った方が幸せなんじゃないの?と思うけど、わがままだから「さよならは言わないで」と思ってしまう。そういうジレンマを素直に歌った曲。もちろん、私の経験に基づいた歌詞です。

Bad Bad
“新しい恋の始まり”みたいなイメージ。恋の始まりって「私なんて…」と情緒不安定のようになるし、自分がめちゃくちゃ弱く感じるときもある。「この人と出会う前だってちゃんと幸せに暮らしていたのに、なぜこんなに切なくて苦しいの?」って、心を恋愛感情にかき乱される感じを描いた。でもそれと同時に、恋をすることで自分のことをすごく強く感じるときもある。愛する人に愛されることで、何でもできる最強の気分にもなる。そういう感情も描いています。あと、歌詞に出てくる“098 gyal”というフレーズは、地元沖縄(098は沖縄の市外局番)の女の強さを表したもの。島の女は、男たちがメソメソ悩んでいても「大丈夫っしょ」って言ってくれる。自分の愛する男を傷つけるやつは許さない。そんなアティチュードが沖縄の098ギャルなんです。

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ミュージックビデオ

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