1950年代後半、ドラマー/バンドリーダーのアート・ブレイキーは、あるサウンドとムードを探していたと思われる。彼は1956年にホレス・シルヴァーと共にザ・ジャズ・メッセンジャーズを結成、バンドの中心となって、若い演奏家がジャズを学ぶ伝統を築いていた。1957年、バンドのメンバーであるジャッキー・マクリーンは、ビバップ、ゴスペル、ファンクが融合したハードバップを演奏していたが、ブレイキーは、もっとジャズと教会音楽が強く結びついたサウンドを模索。1958年、リー・モーガン(Tp)、ベニー・ゴルソン(Ts)、ボビー・ティモンズ(P)、Jimmy Merrit(B)という新たなメンバーをそろえ、翌年1959年、アルバム「Moanin’」をリリース、ジャズ界では珍しく、芸術と商業の両方で大きな成功を収める作品となった。このアルバムはヒット曲を多く収録、最も有名なのは、録音当時22歳だったティモンズが作曲したアルバムタイトルトラックで、シンプルなハーモニーと、心地良いグルーヴとスイング感に満ちており、リー・モーガンのトランペットは、幅広い音域に跳躍しながら溌剌としたメロディを演奏、ファンキージャズムーブメントを象徴する楽曲として知られるようになる。また若いサイドマンが自らのオリジナル曲を演奏することでバンドは活気にあふれている。その中心にいるのはベニー・ゴルソンで、本作では、6曲のオリジナル曲のうち4曲を提供、"Along Came Betty"と、"Blues March"は、バンドのライブの定番曲となって、後に多くの演奏家に取り上げられるスタンダードとなった。また、やはりゴルソン作曲でブレイキーの多彩なドラムスタイルが楽しめる"The Drum Thunder Suite"は、3つの組曲で構成、彼の作曲家としての才能を垣間見ることができる。ウェイン・ショーター、フレディ・ハバード、ウィントン・マルサリスなど、数多くの名演奏家、作曲家が所属することになるザ・ジャズ・メッセンジャーズのその後の歴史を考えても、「Moanin’」は、アート・ブレイキーが作った最高のアルバムといえるだろう。
その他のバージョン
- 2020年
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