MIXTAPE PLUTO

MIXTAPE PLUTO

10年以上にわたってスポットライトを浴びる中、フューチャーは多くのオルターエゴ(分身)を表舞台に登場させてきた。例えば2017年の『HNDRXX』では、ソウルフルなヒッピーという人格のFuture Hendrixが、そして2019年の『Future Hndrxx Presents: The WIZRD』では、彼の叔父がつけたニックネームのThe WIZRDがそうだ。また、Super Futureが最もキャッチーな彼を体現しているのに対し、Fire Marshal Futureは(クラブを閉める権限を持つ消防保安官さながらに)ラッパーとしての最もクールな彼を表現する。しかし、2012年のデビューアルバム『Pluto』を含め、彼の最も初期のアルバムに存在したキャラクターであるPlutoは、しばらく姿を見せていなかった。そのアルバムで明らかにしたのは、彼が隠れたロマンチストで、予期せぬヒットメイカーであるということだった。 フューチャーの2024年初のソロ作品『MIXTAPE PLUTO』のカバーアートに映る不気味な家にはネオンピンクの照明がともっている。その家とは、グッディー・モブからアウトキャスト、そしてフューチャーに至るアーティストが、史上最高に生命力と独創性にあふれたラップを生み出したジョージア州のレコーディングスタジオ、Dungeonに他ならない。この地下にあるスタジオのオーナーは、フューチャーの年上のいとこであり、Organized Noizeというプロダクションチームのプロデューサー、リコ・ウェイドだった。ウェイドが52歳で他界した時、フューチャーは感動的なメッセージをインスタグラムに投稿した。「今の自分の人生は、俺のいとこがいなかったらありえなかっただろう。永遠にあなたを愛しているよ」 誰一人としてゲストアーティストが参加していないこのアルバムの17曲を通して、フューチャーは彼のメンターだった叔父だけでなく、自身が登場した時代にも敬意を表している。「SKI」「MJ」「READY TO COOK UP」は、2011年の『Dirty Sprite』、2012年の『Astronaut Status』、過小評価された2013年の『F.B.G.: the Movie』あたりの彼のトリッピーで粗い時代をアップデートしたものだ。特に「READY TO COOK UP」は、アルバム『Dirty Sprite』の印象深いタイトル曲「Dirty Sprite」を高級に仕立てた続編のように感じられる。今や彼はヘリコプターで飛ぶようになったかもしれないが、今もストリートの感覚は忘れていない。 そして、本作でフューチャーはソウルフルな面でも光を放つ。人魚や巨大な波の揺らめく幻影を語る「SURFING A TSUNAMI」や、「流した大量の涙、俺は海を埋められるだろう(So many tears, I could fill up an ocean)」と静かに歌う「OCEAN」。そして、悲痛な「LOST MY DOG」で彼はフェンタニル(鎮痛薬)の過剰摂取で亡くなった友人を追悼する。「彼のママは天使を育てようとしたが、パパのようにギャングスターになった/俺たちは同じ痛みを共有していたから、俺は彼が幸せじゃないと知っていた(His mama tried to raise an angel, turned out gangster like his daddy/We share the same pain, so I knew he wasn’t happy)」。つまり、このアルバムは、これまでの側面に加えて、フューチャーが現代の最も偉大なブルースマンの一人であることも証明している。

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