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my bloody valentineが1991年にリリースした名盤『loveless』。困難を極めたその入念な制作過程については、長年にわたって多く語られてきた。レコーディングには2年の年月がかかり、その間バンドは20以上のスタジオを渡り歩いた。アーティストとして自分のビジョンに忠実に、音作りには1ミリたりとも妥協しないと決意していたリードボーカル/ギターのKevin Shieldsにとって、それは非常にストレスの多い日々だった。「状況によるストレスの方が多かった」と、ShieldsはApple Musicに語る。「まったく金がなくて混乱した時期があった。金がある状態にしておくべきだったのに、僕たちは金がなくなる方向へ進んでしまったんだ」。このセカンドアルバムの制作を始めてから3か月後、どんな作品にするべきかを明確に把握していたShieldsは、絶対にその邪魔をさせないという、自ら「ハードコア・アティテュード」と呼ぶ態度を見せるようになった。「スタジオで問題が起きたら、即中断した」と、彼は振り返る。「スイッチを切って、『ロボットがもう動かない』とか言って、要するに仕事を放棄したんだ」外部からのあらゆるプレッシャーにもかかわらず、Shieldsは彼にとって最も大事なこと、つまり音楽を守り通すことができた。「今聴ける完成作は、すべてが本当にいい、ストレスのない雰囲気の中でレコーディングされたもの」と、彼は言う。「ポジティブで、ハッピーな環境で作られたんだ。つまり、ストレスになった部分は全部、機材の不具合だったってこと」かき鳴らされるヘヴィなギター、たたき付けるドラム、そしてドリーミーなボーカルが押し寄せるオープニング曲「only shallow」は、まどろむような陶酔感に満ちている。「基本的に1960年代のギター機材を多用しているけど、後でそれをサンプリングして、元の音源の上に数回かぶせている」と、Shieldsは言う。この作品でのプロダクション技術は先駆的で複雑だが、曲に対する彼のアプローチは直接性がすべてだった。「sometimes」の魅惑的な揺らぎがそれを見事に要約している。「その曲の基本的なアイデアは、簡潔でかなりシンプルで、変な意味で複雑だった。こういうボーカルをやってみたかったのと、最後にはすごくストレートでシンプルなサウンドになる展開を頭に描いていた」『loveless』は、聴くたびに印象が変わるように意図的に設計されている。聴き手の目の前で形を変えていくようなサウンドスケープとしてのロックミュージックだ。「違いにフォーカスしやすいようにミックスしてある」と、Shieldsは言う。「はっきりとした焦点がない。だからこそ、その時の気分や、どのくらいの音量で聴いているかによって違いが出てくる」。つまり『loveless』を作った本人も、他のリスナーと同様にそれを経験することになる。「僕だってみんなと同じ状態になる。でも僕には何が起きているのかはっきり分かっているんだ」