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光の屈折のように、あるいは万華鏡のように世界の見え方を変えてしまうアルバムだ。ヒップホップやソウル、ジャズやロックなどを自由自在に行き来し、ブレンドすることで生まれるKroiの音楽。その無限の可能性が、このメジャーファーストアルバムには詰め込まれている。アルバムのオープニングを飾る「Balmy Life」で、内田怜央(Vo)はクリスピーにはじけるようなワードセンスのラップとソウルフルなコーラスを使い分けながら、悩める日々をかいくぐるように進んでゆく。アップリフティングなジャズファンクから唐突にネオソウル風の深いグルーヴへとムードを切り替える「sanso」のようなナンバーでさえ、Kroiの音楽はチャーミングさを見失うことがない。アルバム後半はウェットな情緒を織り込みながら感情表現の奥行きを伝え、とりわけリリカルな生活感と哀愁をなびかせる「帰路」は珠玉のスタンダードとして余韻を残してゆく。いびつなマインドを抱いたまま、それでも心地よいヴァイブスを共有しようとする姿勢が伝わる作品。