フランクとショパンのチェロソナタはいずれも記憶に残る美しいメロディと情感にあふれ、かつ演奏家の高い技術も存分に堪能できる名作である。また、チェロとピアノに主従関係がなくどちらにも同等の地位が与えられている点でも共通している(本作でゴーティエ・カピュソンとユジャ・ワンが演奏しているのはフランクのバイオリンソナタをチェロとピアノのために編曲したもの)。つまりこれらの2つのチェロソナタはカピュソンとワンという2人の卓越した演奏家にうってつけの作品である。例えば、フランクのソナタの第2楽章におけるワンによる燃え上がるような導入部分はカピュソンの力強く勢いのある演奏の導火線となっている。また、ショパンのソナタの荒々しいスケルツォと詩情あふれる最終楽章は、2人の名手からチェロとピアノが互いに刺激し合うスリリングな演奏と作曲家が求める軽快さや気品を表現する技術を引き出す。アルバムのラストに添えられたピアソラの"Le Grand Tango"では、息をのむような優美さと白熱するリズムの対比が印象的に演奏される。最高峰の演奏家による快作。
- ルノー・カピュソン & カティア・ブニアティシヴィリ
- ベルトラン・シャマユ, フランス国立管弦楽団 & エマニュエル・クリヴィヌ
- カミーユ・トマ, ブリュッセル・フィルハーモニック, ステファヌ・ドゥネーヴ & マチュー・ヘルツォーク
- 小澤征爾, マルタ・アルゲリッチ & 水戸室内管弦楽団
- シャニ・ディリュカ, パリ室内管弦楽団 & ベン・グラスバーグ