Fever to Tell

Fever to Tell

Karen Oはかつて、初のフルレングスアルバム『Fever to Tell』に至るまでの感情を、西部劇でブーツが鎧(あぶみ)に引っかかったまま野生馬に引きずられるカウボーイのようなものだったと表現した。一方で、自分はヒーローだけれど、他方では馬が主導権を握っているような状況だとも。これは彼らの音楽そのものの緊張感をとらえているという点で、絶妙なメタファーだといえるだろう。同じくミレニアムの変わり目にニューヨークシティから登場したInterpolやThe Strokesは、4、5人の男が不屈のユニゾンで活動しているように聴こえた(そして見えた)。それに対してヤー・ヤー・ヤーズは、3人のメンバーがマットの対角で絶えず引っ張り合っているようなサウンド(そして姿)で、かろうじてコントロールされたエネルギーに満ちており、バラバラにならずにうまくやり遂げることができるのか、固唾(かたず)をのんで見守ってしまうほどだった。 このデビューアルバムでは、「Y Control」でディスコを、「Man」ではブルースロックを、そして、それ以外では一般的に心の迷いよりも身体の緊急性を優先するサウンドを聴くことができる。例えば「Cold light(冷たい光)/Hot night(熱い夜)/Be my heater(私のヒーターになって)/Be my lover(私の恋人になって)」とKaren Oが「Cold Light」で歌うように。それほどシンプルなのだ。しかし、アルバムの中心にあるのは、ニルヴァーナ以降はメインストリームで見られなかった武骨な凶暴性を維持しつつ、その気になればアリーナを満員にすることができ、なんとかバラバラになることを回避することもできるバンド、という感覚だった。また、彼らにはKaren Oという原始的で魅力的なリードボーカリストがいて、その生々しいパワーは、そもそも彼女の中にそれが備わっていたという衝撃が原動力になっているようにも見えた。 さらにこのアルバムには、ビリー・ホリデイやElvis Presleyが「Blue Moon」を歌うのと同じくらい超絶にロマンチックな心配事を、汚れやノイズと結びつけた「Maps」という曲が収録されていた。当時のボーイフレンドだったライアーズのAngus Andrewのために書いたこの曲について、Karen Oは後に、みんなに聴いてもらいたかったラブソングだと説明している。彼女は願いを叶えたのだ。

オーディオエクストラ

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