Definitely Maybe (30th Anniversary Deluxe Edition)

Definitely Maybe (30th Anniversary Deluxe Edition)

オアシスは楽なやり方とは無縁のバンドだ。約20年に及ぶそのキャリアを通じて、マンチェスター出身の5人組は常に危機にひんした状態で、混沌や苦難を糧にしながら前に進んできた。それはデビュー作『Definitely Maybe』の制作においても例外ではない。ただ、この時に限っていえば、彼らの抱えていた問題はリアムとノエルのギャラガー兄弟の確執とは無関係だった。耳にする誰もが当代随一と認める曲の数々をそろえていたにもかかわらず、まだ成長期にいたオアシスはスタジオ経験に欠ける新しいバンドの多くが直面する平凡な問題に悩まされていた。つまり、彼らのスリリングなライブの魔術をスタジオで再現できずにいたのだ。 だからといって、それがアルバムを聴いて分かるわけではない。『Definitely Maybe』は初めから完全に出来上がった現代の古典的名作として登場したように見え、その自信たっぷりな態度に努力の影は見えず、半日であっさりと作ってしまったかのような容赦ない才能を感じさせる。まるで「そう、このアルバムで流れを変えてやる、文句あるか?」とでも言わんばかりだ。しかしその奥には、失敗の連続があった。オアシスは2009年パリ公演のバックステージで起きた、致命的な最後の殴り合いよりもずっと前に頓挫していたとしてもおかしくなかった。 1994年1月にウェールズのMonnow Valley Studioに入った時点で、オアシスはすでにすさまじいライブをやってのけるバンドとしての地位を確立しており、大成功するデビューアルバムを目指していた。その鍵はライブでの止められない勢いを捉えることにあると正しく理解していたノエルは、熟練サウンドクリエイターのDavid Batchelorをプロデューサーとして迎えたが、その決断が裏目に出た。Batchelorが各メンバーのパートを別々に録音する方法を取ったために、彼らのサウンドから粗削りな質感が失われ、聴き手をぼうぜんとさせるはずだった曲が不可解にも弱々しいサウンドになってしまったのだ。 あるべき姿への自信の表れとして、バンドのレーベルであるCreation Recordsは、5万ポンドを費やした最初のセッションをなかったことにして、新たなレコーディングの場を設けることを許可した。今度こそ、彼らはうまくやらなければならなかった。コーンウォールのSawmills Studioで、バンドの力を最大限に引き出す任務を課せられたのは彼らのライブでサウンドエンジニアを務めたMark Coyleだった。Coyleはレコーディングをライブハウスで行うギグのようにして、メンバー全員を一つの部屋に集め、お互いの近くに立たせた状態でベーシックトラックを録音し、そこにノエルがギターのオーバーダブを後付けしていった。その結果、尖って逆立つようなサウンドを録音できたが、まだ完全とは言い難かった。突破口を開いたのは、ニュー・オーダーやビリー・ブラッグ、エレクトロニックなどのアルバムでエンジニアを務めた経験があるOwen Morrisの手を借りたことだった。彼の大胆不敵なミキシングによって、オアシスの楽曲に堂々たるダイナミズムが加わった。さらに彼はボーカルの一部を再録音するためにリアムを呼び戻し、後に当代きっての魅力的なロックンロールシンガーとしてのリアムの地位を確立させるに至る、リスナーを“酔わせる”歌声を引き出した。 そうしてすべてのハードルを乗り越え、オアシスは目的を達成した。ロックンロールを語る上で外すことのできないアルバムが完成したのだ。「Rock 'n' Roll Star」のとげのあるリフから、壮大に鳴り響くシンガロングを巻き起こす「Live Forever」、「Cigarettes & Alcoho 」のT. Rex風のグラムパンク、そして切なる願いを歌い上げる「Slide Away」まで、『Definitely Maybe』は1960年代の憧れをセックス・ピストルズの冷笑と混ぜ合わせたアルバムになった。そこには、現実逃避や現状打破をテーマにした熱いアンセムと共に、興奮して最高潮に盛り上がる夜遊びの真っ只中に不時着したかのような曲が並んでいた。家に帰らず、いつまでもそこにとどまっていたいと思わせる魅力があった。 1994年8月にリリースされたこのアルバムは、イギリスの音楽シーンを塗り替え、インディーロックがメインストリームカルチャーを席巻してブリットポップが君臨する時代の先駆けとなった。そして当時イギリス史上最も速いペースで売れたデビューアルバムとなり、オアシスをスーパースターへと押し上げた。その後、ノエルとリアムは二度と誰にも聞かれないところで口論できなくなったほどだ。これはすべてが始まった場所であり、今でも最初に聴いた時と変わらず自由で爽快なサウンドを響かせるアルバムだ。幾度かの試みが必要だったが、最終的に彼らはやってのけたのだ。

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