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バンドブームの喧騒の最中の80年代末期に現れたFLIPPER'S GUITARは、斬新な音楽の提示法を実現したグループとして記憶されている。90年発表のこのセカンドは、5人編成から小沢健二と小山田圭吾の2人組になったばかりの時期のもの。それまで英語詞のみだった彼らが日本語を唄いはじめたことでも話題を呼んだ作品である。ネオアコースティックはもちろん、ソウル/サウンドトラック/フレンチポップ/ソフトロックなど多岐にわたるアレンジを聴いていると、まるで彼らのお気に入りの音楽を次々と紹介されているかのようだ。前作からのサウンドプロデューサーである吉田仁(サロン・ミュージック)との相性は上々。ロンドン録音による本盤は楽曲の出来も秀逸で、同年のレコード大賞の最優秀アルバム賞、グループはニューアーティスト賞を受賞している。そして最も特筆すべきは、ここでみられるルーツ音楽の引用における小粋さと、センスあふれる秀逸な編集感覚。さらにそれらがアニエス・ベーやアノラック系といったファッションともども、文系人間の新たなライフスタイルとして表現され、新しいカルチャーを生んだ。